現在、正式とされている和食の作法は、豪勢な「本膳料理」を前提としている。
もっとも「一汁三菜」の庶民的な銘々膳も、本膳=一の膳のみの状態だから、
作法的には同一であり、現在の家庭での和食も、一部大皿料理が混じる以外は、
銘々膳の作法でまかなえる。
逆にいうと、いわゆる専門店での「日本料理」は膳形式ではなくなり、
西洋料理風の皿の置き換え形式になっているので、
”複数のおかずとご飯を交互に食べる”という基本作法ができなくなっている。
なので、和食作法の実習は、日本料理店ではまったく不可能。
小笠原宗家礼法総師範の私は、
かように現在の日本料理を厳しく批判する立場なのだが、
先日の記事(和食の作法1)のように、ご飯偏重の既存の和食作法の方に疑問が出て来た。
酒宴料理でしかない現在の日本料理は、
皿ごとに出されるおかずだけをまず食べ、
最後は、ご飯が漬物と一緒に出される。
酒の席だと、そのご飯は茶漬けの場合もある。
これは、主食たる”飯”のはなはだしい軽視であるのだが、
実は、「湯漬け」という伝統的食べ方でもある。
本来の湯漬けはおかずもたいしたことないが、
現在の日本料理では、立派なおかずがその前に複数続くので、栄養的に問題ない。
そして、ご飯は最後に粥状態で、さらっと食べるので、量が少なくて済む。
すなわち、”ご飯を食べるための食事”という発想でなくなる。
この食べ方、”酒好きなお父さん”の食べ方であり、
食事に酒を導入すると、必然的にこうなる。
とりわけ、日本酒は(少なくとも私的には)、同じ米のご飯と両立できないので、
おかずは酒の肴として、ご飯抜きで食べ、
最後に残ったご飯は、すでにおかずは平らげたので、
適当にふりかけなどかけてさらっと食べる。
もともと、最後に飯椀に湯や茶を入れたのは、
椀を洗う意味もあった(銘々膳では食器は洗わない)。
この食べ方は、ご飯を椀一杯ですませ、しかも最後なので、
カロリー的にも血糖値的にも望ましい。
今では私も、血糖値の上昇を抑え、栄養バランスを豊かにするため、
おかずでご飯を食べずに、
サラダ→おかず→ご飯という時系列で食べる。
最も空腹な段階でサラダに手をつけるので、まずは野菜の摂取量が増える。
次のおかずは、白米と一緒に食べないので、薄味ですむ。
そしてご飯は充分食べた後なので軽く一杯ですむ。
私がこの食べ方に慣れた一番の理由は、
自分が”酒好きなお父さん”になったからにすぎないのだが…。
かような食習慣が確立されると、外食の”ランチ”など、
いまだに飯を食べるための組合せで炭水化物が多すぎて
(ご飯大盛、半チャンラーメンなど)、とてもでないが注文できない。
飯中心=カロリー摂取優先の食事は
(いつでも空腹の男子高校生以外の)現代人には合わない。
ちなみに”糖質”を蛇蝎の如く嫌悪する民間健康法があるが、
特定の栄養素をかたくなに拒否する極端な発想は、
強迫症状そのものであり、精神的にも不健康
(これは”紫外線”や”自然放射線”についてもいえる)。
なによりブドウ糖は脳の活動源として必須なのだ。