体育日の休日は、電車の旅に出ようと思っていたが、
小笠原弓術家の草鹿式(鹿の的を射る競技)が靖国神社で行なわれるというので、
同じ小笠原流に属する者としてこちらを優先した。
靖国神社・護国神社の類いには足を踏み入ないつもりだったのだが、いたしかたない
(その理由は、我が曽祖父が幕軍として箱館で戦い、その後駿府の臨済寺に幕軍慰霊の碑を建てた、という事を列挙すれば推測していただけよう)。
頼朝の巻狩に起源をもつ、草鹿(くさじし)の的は、
午前と午後の2回開催されるので、じっくり見ることができた。
もちろん私は、演者の所作(指使いや足使い)を細かく観察。
弓を射る瞬間は、観客も固唾を呑んで静かにするのだが、
プロでもないのにでかいカメラを構える”カメラおやじ”という人種は、
所かまわず「ピピッ」というピント合せの音と「カシャ」というシャッター音を無遠慮に連続して響かせる。
マイクでの説明の邪魔だし、第一私が撮っている動画の音声にノイズが入ってしまう。
最前列に立って夢中でシャッターを押している”カメラおやじ”の肩をたたいて、
「消音にしてくれない?」と頼むと、
おやじはCanonのEOSの設定画面をあちこちいじったあげく、「これが最小音」だと。
我がNikonならちゃーんと「消音」設定があるのに…Canonってできないの?
鎌倉時代からの由緒ある小笠原弓術を堪能して、ついでに靖国の境内を歩き回る。
第二次大戦の英霊については私とて祈る気持ちがあるが、
戊辰戦争での自軍の死者を英霊化する一方、
幕軍側の遺体を腐敗するまま晒させた無慈悲さは、同国人として許せない(それが曽祖父の思い)。
中国人の同僚が、鎌倉にある”元寇の碑”のように、敵味方双方を慰霊する所であればいいのに、と言っていたのを思い出す。
神社を出て向い側は北の丸公園。
さらに立派な田安門をくぐり江戸城天守閣跡に登る。
松の廊下跡、富士見櫓を見て、百人番所の建物を見て、大手門に出る。
草鹿の式を見て江戸城を巡り、武家の世を偲ぶことができた。