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ジェイソン・ゴア サイン&RC GOLF
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聖域 篠田節子
出版社で編集の仕事をしている主人公が転勤になり、急に辞めてしまった前任者の荷物から未完の小説の原稿を発見する。それを読んだ主人公が、その小説をどうしても世に出したいと思い、その著者を捜す。その経緯が書かれたサスペンスなのだが、本書の本質的なところは全く別のところにあるようだ。本書のストーリーが成立するためには、主人公が、「どうしてもその小説を完成させたい」という気持ちになることが必須だ。そこのところで作者が苦労しているのが良く判る。本書ではその小説を紹介するところの引用がかなり長い。しかもその引用部分が、そのまま引用されているのか、本書の記述者が要約したものなのかが途中で判らなくなる。また、引用していることを示す「」や『』などが全くないので、読んでいるうちに本書の地の文なのか引用なのかも判然としなくなっている。こうしたところも「主人公が小説を完成させたいと思う」ということを読者に納得してもらうための苦肉の策だろう。本書ではそれが結構成功しているような感じがする。(「聖域」篠田節子、集英社文庫)
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