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ビューティフル・ネーム 鷺沢萌
彼女の作品は「ウェルカム・ホーム」に次いで2冊目だが、今回もその文章に天才的なものを強く感じた。「名前」にまつわる短編が4編収められている本書だが、そのうち3編は「ビューティフル・ネーム」という名前で刊行されるはずだった連作集に収録される予定だった短編で、そのなかの1つは彼女の死後彼女のパソコンから見つかった未完成の作品とのことだ。題名も正式なものではなくパソコン内のフォルダ名とのことである。そして4つの短編のうち最後の1編は、同じパソコンから見つかった未完成の作品で文字通りの遺作である。今の時代、パソコンの中身まで本になって刊行されるとは、そういう時代といってしまえばそれまでだが、本人も想定外なのではないかと思う。本書中の完成作品2編に共通して言えることは、かなり重たくなりうるテーマを明るく語り、最後に希望を持って終わっていること。「ウェルカム・ホーム」を読んだときにも感じたことだが、こうした小説の明るさと彼女の自殺というのがどうしても結びつかない。外に対する明るさや気配りで、内側に重たいものをため込んでしまったのだろうか。それとも、そもそも作家の死と書かれた小説を過度に結びつけること自体が間違っているのだろうか。 それから、未完成の作品を読んでみた感想だが、完成作と比べてかなり読みにくいことが判った。当たり前かも知れないが、やはり未完成品は説明が多い割には内容が曖昧な部分があるが、完成作は少ない言葉にもかかわらず内容がしっかり伝わってくるように思われる。(「ビューティフル・ネーム」鷺沢萌、新潮文庫)
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