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卵の緒 瀬尾まい子

表題作の方は「こういう関係は素晴らしいけど現実にはちょっとあり得ないだろうなぁ」という気がしてしまって、そこがどうしても気になるところだが、いずれにしても読んでいて大変心が和む小説だ。作者の作品は本書で3作目か4作目だが、まさにその感覚が作者の作者らしいところだろう。もしかすると、このように考える人が世の中にはいるかもしれないし、自分の感性だけで世の中をみてはいけない、ということなのかもしれない。小説だから「所詮は作り事」と割り切ってしまうには惜しいほど暖かい掌小説であることは間違いない。本書にもう1つ収められている「7's Blood」の方はそうした違和感もなく読めた。離れて暮らしていた姉弟が心を通わせていく様を、静かに暖かく綴っている。大変切ない話なのだが、こちらも何故か何とも心が和む。いままで読んだ作者の作品の中のBEST作品のように感じる。(「卵の緒」瀬尾まい子、新潮文庫)
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チッパー・ジョーンズ バット MLB

大リーグ、アトランタ・ブレーブスの看板選手、チッパー・ジョーンズのバットをあしらったコレクティブルである。1993年以降一貫してブレーブスに在籍するフランチャイズ・プレーヤーである。既に2000本安打も達成しているし、本塁打も400本近くを打っており、ブレーブスの永久欠番、殿堂入りはほぼ間違いのない大選手だ。オールスター出場も5回を数える。しかし、彼の記録をみると、不思議なことに、年間成績では打撃部門のタイトルを1つも取っていない。年間記録にならない記録としては、17試合連続長打という大リーグ記録が光っている。アトランタでの彼の人気は絶大なものがあるようで、私の知り合いでアトランタに留学していた人物もこのチッパー・ジョーンズの大ファンだった。
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やわらかい遺伝子 マット・リドラー

生物学で「遺伝か環境か」という問いを巡って長い間論争が続いていたことは良く知られているが、それがどのように決着したのかを知る人は少ない。私も知らなかった。素人としては「多分明確な決着はつかず『どっちも』ということに落ち着くだろう」と考えてしまうが、生物学界での結論も、ほぼ素人考えと同じで、なんとも平凡な「遺伝も環境も」ということなのだそうだ。これでは、あまりにも平凡で「そんなこと言われなくても判っている」と言われそうで、熱くなって論争していた多くの生物学者も、なんとなく割り切れない感じなのだそうである。死闘を繰り広げてきた戦いの末引き分けで「勝者なし」となったような感じなのだろう。そこで登場したのが本書で、引き分けといっても多少の有利不利はあったはずなので、どちらが有利だったかをジャーナリストの目で判定しようと試みたわけだ。その結論が「やわらかい遺伝子」という言葉に象徴される「遺伝子は環境によって振る舞いを変える」という考え方だ。なるほどともいえる考え方だが、私としては、先日読んだ「利己的な遺伝子」の考え方の方が魅力的だし、そもそも遺伝子派にはあまり強く主張しすぎると「差別論者」と言われるハンディがある。どちらかというと、遺伝子派の肩を持ちたい気がする。(「やわらかい遺伝子」マット・リドラー、紀伊国屋書店)
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