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ジョー・ソーントン RC NHL

NHLのスター選手、ジョー・ソーントンのRC(ルーキー・カード)である。このカード自体は全く珍しいものではないが、ここでこれを紹介するのは、彼のRCが、NHLのRCの歴史を語る上で少し特殊な位置を占めていると思うからである。まず、1950年代、60年代については、カードの製造枚数・種類ともに少なく、その頃の「選手のRCの人気」は完全に「選手の人気度」と連動していた。ゴーディ・ハウ、ボビー・オアといった歴代選手の人気NO.2,NO.3の選手のRCがそれに該当する。これらは現存する枚数が少ないことから、通常の保存状態のものでも入手はなかなか難しい。70年代はやや低迷が続くが、79年にNHL史上最高のプレーヤー、ウェイン・グレツキーのRCが製造され、これがそれ以降長い間、最も人気のあるRCとなった。このカードは、希少性は大昔のものよりもないはずだが、とにかく人気があり、いったん手に入れた人が手放さないこともあり、状態の極めて良いものは数万ドルの値がつくのである。RCのなかで、グレツキーのRCがビンテージものを除いて最も人気があるという時代はその後20年以上も続いた。そしてジョー・ソントンのRCの登場である。彼のRCは、何種類もあるのだが、その中で最も製造枚数のすくないもの(残念ながら写真のものではない)はグレツキー以降では最も値段の高いRCとなった。それは、RCの価値が必ずしも選手の実力や人気と連動しなくなったことを象徴する出来事といえよう。 ごく最近では、製造枚数が100枚以下に限定され、直筆サインがなされ、さらにユニフォームの一部が埋め込まれているというきわめて豪華なRCが登場し、最も人気のある選手のRCが平均1万ドル以上で取引されている。その選手がグレツキーを上回る選手になるかどうかは分からないが、RCの価値はグレツキーに匹敵するという計算になる。RCの世界も行き着くところまで行ってしまっているのは確かなようだ。
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猫を抱いて象と泳ぐ 小川洋子

 ミステリー系の作品を読むことが多いせいかもしれないが、作者の文章を読むと、本当にどれも美しい文章だなぁ、小説らしい小説だなぁと強く感じる。奇抜な言い回しや難しい表現などなく、抑制の効いた静かな口調が、読んでいて何とも心地よい。
 本書は、読んでいない人には全く意味不明の題名の本書だが、読み進めていくうちに徐々にその意味するところが判ってくる。また、最初のうちはよく判らない登場人物、よくわからない状況設定などが数多くあるのだが、それも徐々によく判るようになってくる。それでありながら、最初から独特の哀愁に満ちた世界に引き込まれ、読みにくさが微塵もない。現象面だけを見ると大変悲しい話なのだが、視点を変えて主人公の思いに身を委ねて読むと、とても温かい話に思えてくる。「悲しみ」「幸せ」ということなど相対的なものなのだということを強く感じる作品だ。(「猫を抱いて象と泳ぐ」小川洋子、文藝春秋社)
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