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偏食的生き方のすすめ 中島義道

高野秀行がエンタメノンフの大傑作と太鼓判をおす本書。大きな本屋さんをいくつも回って探したがどこにもなく、アマゾンで探しても中古本が1冊だけ。まさにそれを入手しようと思っていたところだったのだが、昨日何気なく入った近くの小さな本屋さんで本書と邂逅。2005年の初版本で、5年間その本屋さんの棚にひっそり置いてあったのかと思うと本当に不思議な気がした。ということで、読みかけの本を読むのを全て中断し、早速本書を読んでみた。
 著者の本は2冊目だが、天下の奇書の名にふさわしい、読んでいて頭がどうにかなりそうな本だ。著者の「偏食ぶり」には理解不能のところが多いが、要するに本書を読んで理解できるのは、理解できない他人がいることをまず理解するところから始めなければならないということだ。高野秀行によれば「出版社や家族とのトラブルを丸ごとさらけ出して読者をどん引きさせる芸風は他の追随を許さない」となるが、四方八方に振り向けられる「マイナスのこだわり」を持つことの意味、それによる「生きていくことの難しさ」を何とか伝えようとする著者の努力は、正に他の追随を許さないものだ。奥さんが一生懸命作ったオムライスを「楕円形でない(丸すぎる)」という理由で食べなかったなどという偏食ぶりのエピソードには、背筋が寒くなる。題名の「偏食的」が、食べ物に対するこだわりだけではなく、生き方全般に対する「マイナスのこだわり」だということが判ってくると、そうした一見理解不能の著者の所業が全てつながっていることが了解される。前に読んだ著者の本の紹介で、解説が素晴らしかったと書いたが、この本の解説も大変面白い。とにかく著者の本の解説を書くというのは大変な覚悟がいることだろう。(「偏食的生き方のすすめ」中島義道、新潮文庫)
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