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現代アートを買おう! 宮津大輔

普通のサラリーマンである著者による現代アート・コレクションの楽しみ方という触れ込みの本書。入門書らしく、非常に親切に、コレクションを始める際の注意だとか、コレクションの醍醐味とかが紹介されていて、読んでいて楽しい本だ。今まで全く知らなかった世界が見られるということで、新鮮な驚きが多い。しかし、著者の豊富な経験談をいくつも読んでいると、本当に普通のサラリーマンだということを鵜呑みにしていのだろうか、と思えてきてしまう。読んでいると、現代アートに親しみが沸いてきて、自分も一歩踏み出せば現代アートのコレクターになれそうな気がしてきてしまうが、やはり著者のようなアートに対する特殊な才能があっての話ではないかという疑惑も同時に沸き起こってくる。そうだとすると、結局は「私はこうしてお金をかけずに高尚な趣味を楽しんでいます」という自慢話ではないのかと思ってしまう。そのあたりが大変微妙な感じだ。
 また、著者がコレクションを始めたのが約15年前のことらしい。思い起こせば私がサインのコレクションをし始めたのもちょうどその頃だ。片や現代アート、片やサインということで、何だか自分がつまらないものを集めてきたような気がして複雑な思いになってしまった。私だって、サインを集めてきたことを本にすれば、本書のような高尚な内容にはならないが、1冊本が書けるくらいのエピソードはあるのではないかと思う。それから本書は、アートの本でありながら、写真が全く使われていない。これは、アート関係の本としては読者に不親切すぎる。版権の問題などがあるのだろうが、せめて自分の所有する作品であれば、そのくらいのハードルは越えて、読者のためになるように配慮して欲しい。(「現代アートを買おう!」宮津大輔、集英社新書)
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