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キング&クイーン 柳広司

「ジョーカー・ゲーム」が大ブレイクして注目されている著者の最新刊。「ジョーカー…」の虚無的な雰囲気の作品から、ジュビナイル本まで作風が幅広いので、著者の本は、今度はどういう本だろうという読む前の楽しさがある。
本書は、暗殺者に狙われている日本に潜伏中のチェスの世界チャンピォンを守ろうとする元SPの女性の活躍を描いたサスペンスだが、何故彼が命を狙われているのか、命を狙っているのは誰なのかといった謎とは別に、小説全体に大きな仕掛けが施されていて最後にびっくりさせられる。(ネタばれになるが)典型的な叙述トリックに久しぶりに出会った気がする。雰囲気は「ジョーカー…」に似た部分もあるが、内容は軽め。しかも最後の方はあまりにも急ぎすぎで、バタバタと説明だけして終わってしまった。やや粗製乱造の感は否めない作品になってしまっている。
昨年はチェスに関する小説の当たり年だったが、本書も偶然が重なったのか、それともそうしたブームにあやかってその時に企画されようやく刊行されたということなのか、どちらなのかは不明だ。(「キング&クイーン」柳広司、講談社)
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