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時を巡る肖像 柄刀一

絵画修復士という仕事に携わる主人公が、仕事を通じて関わるミステリーを解決していくミステリー小説。ただ、絵画に関する薀蓄の部分は、正直に言って、仰々しくてもっともらしいが、どうも嘘っぽいし、絵画に対する描写も、どこか借り物のような表面的な表現、ステレオタイプの言い回しが多く、具体性や説得力に欠けるような気がする。6つの短編が収められており、面白いと思った作品も2つほどあったが、全体としては欠点の方が目立ってしまっている。ミステリーとしても、絵画の世界に浸っていると、ミステリー部分のところを読むのが疎かになってしまい、中途半端な読み方しかできない。絵画の世界とミステリーの世界、結局どちらにも集中できずに終わってしまった。絵画の世界とミステリーの組み合わせは最近TVドラマでもやっていたが、ドラマの方もどうもピンとこなかった。絵画の世界は、事実は小説よりも奇なりという世界なので、読者をうならせるミステリーのフィクションは難しいのではないかと思った。(「時を巡る肖像」 柄刀一、実業之日本社文庫)
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