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ふしぎなキリスト教 橋爪大三郎
西洋的な考えがグローバルスタンダードになりつつある今日、近代社会から続く現代社会を理解するために必要不可欠な要素としての「キリスト教」。そうした考えに基づく「キリスト教」の解説本は数多く存在するし、私自身これまでに何冊もくそうした本を読んできた気がする。そうした類書が数多くあるなかで、本書は、キリスト教の日本人には理解しにくい部分に焦点をあてて、対談形式でその理解しにくい部分を解説してくれているところに大きな特徴がある。(毎回途中で挫折してしまうが)新約聖書を通読していると、どうしても腑に落ちない記述に出会うことがある。何を言っているのか判らない場合は、解説書を読めば判るのだが、何を書いてあるか十分理解できた上で、何故こんなことが書かれているのか、こんな話をキリスト教徒は本当に信じているのか、などと思うことも多い。そうした疑問を解消する上で、ここまで助けになった本は本書が初めてであり、それがこの本のすごいところだと思う。ただ1つ残念なのは、対談形式の聞き手役の先生が、良い質問をしてくれるのはいいのだが、頻繁に、途中で自分の意見を滔々と述べだしたり、読者そっちのけで疑問の答えを理解してしまって次の質問に話を進めてしまったりしていることだ。質問の聞き手が、途中で自説を述べだすというのは、通訳をせずに自分の考えを述べてしまう通訳のようで、読み手としてはかなり混乱する。さらに自分だけ判ってしまって次にいってしまうというのは、読者にはある意味迷惑だ。疑問がほとんど解消せずに対談の当事者だけで了解しあわれると、「まだ読者は納得できていないのに‥」とフラストレーションがたまる。そういう部分が3分の1ほどあってやや残念だが、残りの3分の2は本当に面白いので、それもまあいいかなと思う。次は著者の2人が本当に判らない読者の疑問に答える続編を書いてくれれば良いのではないか。(「ふしぎなキリスト教」 橋爪大三郎、講談社現代新書)