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風の中のマリア 百田尚樹

本書は、単行本で出た時に評判になっていたのだが、何故か読みそびれてしまっていた。今回文庫本になっているのを見つけて、慌てて読んでみた。単行本の装丁ではかなり読み応えがありそうにみえたのだが、文庫本になってみると300ページほどの中篇という感じなのでやや意外だった。本書は、擬人化された寿命30日あまりというオオスズメバチの「マリア」の視点で、晩夏の彼らの生活が語られるというかなり特異な内容の小説だ。ストーリー展開は、ハチの生態を解説した科学書の内容そのものといったところだが、寿命の短い小さな虫にもドラマチックな一生があるのだということを改めて考えさせられる。ハチの視点で書かれているのに、主人公の考えを補足するようなハチの遺伝に関する説明図がでてきたり、主人公の先輩が自分達「働きバチ」の行動を説明する際に、「ゲノム」という単語を連発するのが、(良い意味で)結構笑える。(「風の中のマリア」 百田尚樹、講談社文庫)

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