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チヨ子 宮部みゆき

著者の単行本未収録の短編4つ、中編1つを集めて文庫化した本書。人気作家だけに未収録の作品自体が少なく、こうした文庫化は珍しいとのことだ。内容は、ホラー的な要素の入ったファンタジーSFという感じで、短中編ながら、設定や状況がしっかりつかめないまま終わってしまうというようなこともなく、きちんとストーリー自体を楽しめるのが有り難い。ストーリのアイデアは、類似の話がそれこそいくつでもあるようなありふれたものが多いが、それでも面白いと感じさせるのは、やはり作者の筆力と感性のなせる業という気がする。幽霊といった超自然現象が描かれ、それが解明されないまま終わる話を、ホラーと呼ぶかファンタジーSFと呼ぶかは様々だが、作者が読者を怖がらせようとしている話をホラー、そうでないのをファンタジーSFとすると、本書はちょうどその中間といったあたりになるだろう。(「チヨ子」 宮部みゆき、光文社文庫)

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