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我が家の問題 奥田英朗

普通の家庭のちょっとした波風を描写した軽い読み物という風情だが、予定調和的な結末とか安易なハッピーエンドのようなものを完全に消し去ったようなストーリーには大いに新鮮さを感じた。それぞれの短編の主人公は、ちょっとした出来事に家庭崩壊の不安を感じ、それが少しづつ心の中で大きく膨らんでいく。その不安が杞憂なのか本当の予兆なのかは最後まで描かれない。それでも何とか出口を見出しそうな所で話が終わる。実際の世の中には、この程度の不安の種はいくらでもあるだろう。それだけに本書には、とても深い味わいがあるように思えるのだ。 (「我が家の問題」 奥田英朗、集英社)

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