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蜩ノ記 葉室 麟

最新の直木賞受賞作。すでに名の知られた作家とのことだが、著書を読むのは今回が初めてだった。時代小説の真骨頂は、封建時代という理不尽で窮屈な社会の中で、主人公が正義や信念をどう貫くかという点にあると考えているが、本書のテーマはまさにそれだ。主人公を取り巻く多くの謎と、主人公が貫く正義の行く末がどこなのか、それらの謎が最後にうまく解き明かされていく、本当に良く出来た作品だ。主人公を取り巻く謎も展開も最後まで大変面白かった。余命10年という主人公の境遇も、団塊の世代が自分の余命について思い巡らすという社会の一大関心事に呼応していてうまいと思う。いろいろな書評を読むと、本書は必ずしも著者のベスト作品ではないという。これから他の作品を読んでいく楽しみができて大変嬉しい。(「蜩ノ記」 葉室 麟、祥伝社)

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