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聖なる怠け者の冒険 森美登見彦

著者の久し振りの新作ということで楽しく読んだ。相変わらずの森見ワールドなのだが、えらそうなことを言わせてもらうと、読んでいて、著者は何かに行き詰っているのではないかという感じを強く持った。読んでいると、京都の宵山を経験したことがなくても何故か懐かしいと思わせる世界、遠い昔のバカなことばかりしていた学生時代の思い出などが頭をよぎるのだが、著者自身がそうした世界と距離が出来てしまったようで、当事者感が希薄になってしまているからかも知れない。それともそうした小説を書いているうちに、その世界を客観視することに慣れてしまったせいかもしれない。その意味では、前作の「ペンギンハイウェイ」の方がそうした縛りのない世界を描いていて楽しめたような気がする。本書に織り込んであったチラシをみると、今年の秋・冬に著者の新刊が予定されているという。その辺で、こうした状況をどう打開してくれるのか、著者の熱烈なファンとしては、楽しみなところだ。(「聖なる怠け者の冒険」 森美登見彦、朝日新聞出版)

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