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私の話 鷺沢萌

著者の本はたくさん出ているが、自分はあまり読んでいない。読んだ本は全部、本当にすごいと思ったが、それでもあまり読んでいないのはどうしてだろう。調べたことはないが、彼女の本が、おしなべて入手困難ということでもないはずだ。私自身不思議な気がするが、やはり自死したということで、著者の本を読むことに、少し重苦しさを感じるのは確かだ。「著者の最高傑作」という評判を聞いて、久しぶりにまた著者の本を手に取ったわけだが、やはり強く心をゆすぶられた。自伝的な私小説の本書を読みながら、どうしても、著者が自殺に至った原因とか理由のようなものを探してしまう。著者をよく知る周りの人たちが、こぞって著者の自殺の唐突さに驚いたということなので、そんな種を簡単に見つけられるはずはないのだが、心のどこかで周りの人たちが皆そういう予感がありながら口をつぐんでいるという可能性もあるのではないか。そんなことを考えながらの読書だった。読み終えて、1つ判ったのは、著者の本を読むたびに、「これ以上の本はもう読めないのではないか」と思うことだ。それが著者の本をあまり読んでいない最大の理由のような気がした。(「私の話」 鷺沢萌、河出文庫)

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