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象は忘れない 柳広司
最近「東日本大震災」後といえる小説が相次いで刊行されている。本書も「東日本大震災」を真正面から取り上げた小説だ。大震災については、政府や電力会社の当時の対応について色々な議論があるが、本書の特徴は、その辺りを非常に断定的に記述していることだ。様々な要素を考えたり、色々な立場を考慮したりという作品はいくつもあるが、本書のようにズバリと言い切ってしまうというのも、ある意味で小説ならではの大切なことだと感じる。特に、本書の4つ目に収められた、ともだち作戦に従事したアメリカ軍関係者と心理カウンセラーの会話を軸とした短編は、本当にこんなことが起きていたのかもしれないと思えてきて、背筋がぞっとした。本書を読んでいる最中に、九州熊本での大きな地震のニュースがTVでずっと流れていた。非科学的と言われるかもしれないが、本書を読みながら、やっぱり日本の原子力発電はなくした方が良いなぁと思った。あくまでも小説は小説だし、どこまでが現実と合致しているのかは見極めながら読まなければいけないとは思うが、私自身がそう感じたことも確かであり、これも小説の力なんだと強く感じた。(「象は忘れない」 柳広司、文藝春秋社)
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