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みかずき 森絵都

書評で色々取り上げられている話題作。戦後日本の教育事情を織り込みながら、塾経営に携わる一家の歴史を描く家族小説だ。公教育を太陽、塾などの私教育を月に見立てて両者がどのように対立したり補完したりしながら戦後の教育がなされてきたのかを分かりやすく教えてくれる。本書の良いところは、まず教育のあり方を考えるにあたって塾というものに焦点を当てたところだろう。大義名分や政治に歪められがちな公教育に対して、私教育の世界は、世の中のニーズがストレートに反映される。必要悪とか教育の歪みを助長する存在と言われつつも、世の中に必要とされるからこそ、塾は形を変えつつも生き残ってきた。本書は、その歴史を、それに携わる人が何を考えてきたかを描くことによって明らかにしてくれる。もう一つ本書の良いところは、戦後から現在までの歴史を描くことによって、様々な年齢層の読者がそれぞれ自分の歴史を振り返ることができるということだ。本書によれば、自分の場合は、塾が補習型から進学型に移行し始めた頃に塾にお世話になった世代だ。当時、小学校の担任の先生の塾への敵視は、子どもだった自分にも明確なくらい激しかった。塾に行っていること、私立の中学校を受験することを先生に話してよいのか子ども心に悩んだ記憶がある。自分が受けてきた教育というものをどう整理し、より良い教育のために何を次世代、孫世代に伝えていけば良いのか、真剣に考えなければならないと思わされた一冊だった。(「みかずき」 森絵都、集英社)

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