goo

佐渡の3人 長嶋有

著者の本は2冊目。書評誌で文庫化された本書のことが取り上げられていたので、読んでみることにした。内容は、故郷の佐渡島を離れて暮らす主人公とその家族の話で、主人公が祖父母や大叔父大叔母の納骨のために佐渡島を訪れる話が中心に語られる。主人公が作家という設定だし、細やかな描写が随所に見られるので、自分の体験を基にした私小説のようでもあるのだが、読んでるとどうもそれだけではないような感じのするちょっと不思議な雰囲気の小説だ。フィクションにしては、心理描写のリアリティと細かさが尋常ではない気がする。全体の構成は、短い4つの短編が一つに繋がっている話なのだが、それぞれの短編が書かれた年を見ると、最初の話と最後の話が書かれた年に5年もの間隔がある。何となく不思議なことが多いが、それが何となく心地よい。これこそ作家の個性と力量なのだろうと感じた。(「佐渡の3人」 長嶋有、講談社文庫)

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )