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独裁者プーチン 名越健郎

プーチン大統領の生い立ち、経歴、性格、政策、対日方針などがコンパクトに判る解説書。彼に関する本を読むのは初めてなので、初めて知ることが多く、とてもためになった。刊行は2012年と少し古いが、最近の動静は時事ニュースでフォローすればよいし、人となりは短期間に変わるものではないと思うので、読んでいて不足感などは全く感じなかった。KGBの出世競争でで中佐止まりだった彼が、突然首相に抜擢される辺りにまだ謎や闇の部分があることも分った。特に面白かったのは、彼が熱心に国民向けの記者会見をおこなっているという下りだ。事前に用意されたものとは言え、国民からの直接の「質問」に答える形式の記者会見を頻繁に行い、それを巧みに世論形成や事故アピールに利用しているというのは、自分が漠然と抱いていた「秘密主義者」「こわもて」という彼の印象とは程遠いもので、とても驚かされた。KGBのスパイであったことをジョークにしてしまうような懐の深さとユーモア感覚もかなり意外な一面だ。冷徹な性格などと言われつつも、信条や立場の違う他国の政治家に対して、筋の通った主張、心遣いで信頼を勝ち取っていく様をみていると、有能な政治家のスタンダードを見ているような気がした。(「独裁者プーチン」 名越健郎、文春新書)

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