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ニッポンの書評 豊崎由美

書評家として有名な著者による「書評論」。本の批評と書評の違いは、批評が読んだ後に読むもの、書評は読む前に読むものがということで、書評の世界には一般的な批評文とは違う役割や守るべきルールがあるという。本の冒頭から、なるほどなぁと感心してしまった。本をも読もうとしている人への道しるべとしてどこまであらすじを書けば良いか、自分の知識をひけらかすような文章にならないようにするための注意点とは何か、そしてなによりも読者の楽しみを奪わないためにネタバレに細心の注意を払うべきことなど、書評に関する考察が満載だ。私個人としては、書評は少なくとも1人の読書のプロが勧める本を知ることができれば良いというスタンスに立って、あらすじやネタバレはとにかく最小限にしてもらった方がうれしい。もしかしたら著者も気づいていないかもしれないが、読者は書評者を選ぶものだ。書評を読むとき、あらすじをどのように簡潔にネタバレしないように上手に記述してくれているかとか、その本がもっと面白くなるような知識を得たいといったことも確かに重要ではあるのだが、結局は「この人の紹介する本が面白いかどうか」いう経験の積み重ねが書評家を評価する最大の基準だと思う。そうだとすると、「この本の書評を書いて下さい」と言われて書かれた書評は、あまり悪くは書けないだろうから、そうした書評って一体どうなんだろうと思ってしまう。「ニッポンの書評」 豊崎由美、光文社新書)

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