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草花たちの静かな誓い 宮本輝

著者の本を読むのは久しぶりだなぁと思いながら読み始めた。白血病で亡くなったと聞かされてきた従姉妹が、実は生きているかもしれないと知り、その行方を追いかける主人公。読者としても、直感的に何か悲しい過去がありそうで、主人公と同じ気持ちでためらいながらも真相を知りたいと思う。主人公のとる行動に、やはり自分でもそうするだろうなぁと何度も共感する。この小説の肝は、自分自身がそれを経験しているようなそうした主人公との強い一体感だ。著者の小説は、自分のなかにある別の人生の疑似体験をもたらしてくれる。久しぶりに著者の本を読んで、謎解きとかどんでん返しだけでは得られない読書の醍醐味を思い起こしてくれた気がする。(「草花たちの静かな誓い」 宮本輝、集英社)

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