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何でもない一日 シャーリィ・ジャクソン

人間の日常生活の裏に潜む暗い部分をあぶりだすような短い作品が並ぶ本書。翻訳のせいなのか、そういう作風なのかはよく判らないが、オチがよく判らないまま終わってしまう話があったりして、少し戸惑う部分もあるが、短い掌編を立て続けに読んでいると、不思議とそうしたことが気にならなくなっていく。こんな感じで作者の世界に浸りきることができる作家や作品は久しぶりだ。巻末の解説を読むと、作者は既に故人で、作者の死後に家族によって多くの未発表原稿が発見され、本書はそれらの原稿を編集して刊行されたものだという。こうした作品を、世の中に発表することも考えず、家族にも知られずに黙々と書き続けたのだろうかと考えると、何だかそれだけで背筋が寒くなる。どの作品が良かったかといった個別の作品の出来栄えを云々するというよりも、全部の作品を通じてかなり特殊な精神世界を垣間見ることができた気がして、それだけで十分面白かった。(「何でもない一日」 シャーリィ・ジャクソン、創元推理文庫)

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