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世界遺産ビジネス 木曽功

日本の世界遺産登録推進に裏方として尽力してきた著者によるユネスコ世界遺産事業の解説書。どのような手順でどのように世界遺産が決まっていくのかを当事者がわかりやすく教えてくれるのが本書の魅力だ。世界遺産登録がビジネスと強く結びついているだけに色々学術的な議論だけではないブラックな部分があるのだろうと想像はしていたが、本書を読むと、毎年の委員会による登録決定などの裏に予想以上に大きく政治的要素が作用していることがわかる。本書の面白いところは、著者が裏方としての苦労を強調すればするほど、あまり大声では言えない駆け引きやダークな部分とか要はタイミングなんだということが浮き彫りになってしまい、大変だなぁと思う反面、世界遺産という制度そのものへの疑問を感じさせてしまうことだ。著者の自戒を込めた記述により、高邁な理想を掲げて動き出した制度がやがて当初の目的とか理念を離れて商業的なツールになってしまった経緯がよくわかる一冊だった。(「世界遺産ビジネス」 木曽功、小学館新書)
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