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線は、僕を描く 砥上裕将

ちょっとした偶然から水墨画の巨匠に弟子入りした主人公が画家として成長していく様を水墨画の様々な知識や技法、心構えの説明などとともに描いた小説。読者は、師匠の教えを主人公と一緒に聴きながら学んでいく感じだ。主人公が画家を目指すきっかけがどうにも不自然で違和感が強いが、著者のプロフィールを見ると職業が「水墨画家」となっていて、この作品はまず書きたい内容が初めにあってそれに合わせてストーリーを作ったと考えればしょうがないし、ある意味きっかけなんてどうでも良いくらいの気持ちで読むのが良いのかも知れないと思った。日本文化の誇りとも言える水墨画の世界が、老人の趣味教室のようなところだけで細々と生き残っているという著者の嘆きが胸を打つ。(「線は、僕を描く」 砥上裕将、講談社)
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