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青と白と 穂高明

東日本大震災で多くの親戚を失った仙台出身で東京在住の小説家とその母親や妹の視点から震災前後の出来事や心のうちを丹念に描いた作品。これまでにも大震災を取り上げた小説は何冊か読んだが、この作品ほど当事者の目線で描かれた小説は初めてだ。震災直後のテレビニュースを見ていて「壊滅」という表現に違和感を感じたり、その後の「復興」とか「絆」という言葉に「何も変わっていない」と思わず呟いたりする主人公たち。自分自身、震災後に何故かある作家の本を読めなくなってしまったという経験がある。それは今でも変わらない。震災後に何かが変わってしまったという感覚を持つ人にとって本書は本当に胸に刺さる一冊だ。(「青と白と」 穂高明、中公文庫)
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