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熱源 川越宗一

今年度の直木賞受賞作。ロシアによって祖国を奪われたポーランド人の人類社会学者と日本とロシアの間で翻弄される樺太生まれのアイヌの若者の2人を軸に、人間のアイデンティティ、それぞれの人が守るべきものとは何かを問う小説。主人公をはじめ沢山の実在の人物が登場し、まさに虚実皮膜の小説だ。個人の話を歴史の中に再構築させる語りが圧巻。多くの登場人物一人一人がそれぞれ自分の信念を持って人生を選択していく様に、善悪とか正誤という単純な認識を超えたものであることを痛切に教えられた気がする。(「熱源」 川越宗一、文藝春秋社)
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