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麻布という不治の病 おおたとしまさ

東京の中高一貫教育の私立学校である「麻布」の卒業生に対するインタビューを通じて、麻布という学校の特色を浮かびあがらせようという一冊。自分を含めてほとんどの人は自分が通っていた学校の特色というものをそれほど意識していないと思う。他の学校のことを知る機会が少ないのでそもそも世間一般と比較することが難しいからだ。また、私のように高校を卒業してから50年近く経っているものとしては、今の評判が最近出来上がったものなのか昔からそうだったのかも判然としないし、その当時のスタンダードからどのくらい乖離した特徴だったのかも今となってはよくわからなくなってしまっている気がする。本書の中で最も面白かったのは麻布が体験した「学園紛争」の記録の部分だ。ここで書かれている記録が全てとは言い難いだろうが、70年安保に対する反対運動過激化というこの時代の共通体験を思い起こさせてくれて懐かしかった。それから、50年前の話ということであれば、当時若かった先生であればまだ存命中だ。そうした先生の側の話もあれば、その特徴がより立体的に浮かび上がったのではないかと思った。(「麻布という不治の病」 おおたとしまさ、小学館新書)
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