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たかが殺人じゃないか 辻真先

年末恒例の色々なミステリーランキングで2020年のナンバーワンに選ばれている一冊。著者の年齢が88歳という高齢なことも話題になっているらしい。著者については全く知らなかったが、舞台が馴染みのある名古屋ということもあり、とりあえず読んでみた。内容は、戦後まもなくの名古屋の新制高校を舞台にした本格ミステリー。本格ミステリーの部分は特にどうということはないが、本書の真骨頂は、何と言っても終戦後の地方都市の混乱と復興、終戦を境にした価値観の180度転換に右往左往する人々の様子が克明に描かれていることだ。著者の略歴をみると名古屋出身とあるし、ちょうど主人公の年齢とも重なっていて、まさに著者自身の体験と重ねて書かれていることがわかる。名古屋と縁のある自分としては、栄町とか武平町とか大曽根とか名古屋市民にはお馴染みの地名が沢山出てくるし、小学校の時に社会で習った100メートル道路建設などの話もあって、よみながら、自分の生まれるほんの10年前日本はこんなだったんだという思いが募った。
(「たかが殺人じゃないか」 辻真先、東京創元社)
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