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ダンゴムシに心はあるのか 森山徹
ダンゴムシに関する最新の観察・分析成果を通じて「ダンゴムシには心があるのか」「そもそも心とは何か」を解説してくれる啓蒙書。近くの本屋さんにできた山と渓谷社のコーナーで見つけた一冊。これまで「心とは何か」という問いをについては「意識と同義のようなもの」といった程度のことを漠然と思っていただけだったが、科学の世界ではもっと厳密な定義づけが模索されているらしい。本書では「心」というものを「数多くの刺激の中から特定の刺激以外のものを排除し条件反射とは違う行動を選択するための源泉となる何か」として、ダンゴムシに対して、迷路を彷徨わせたり、その迷路に障害物を置いたり、触手にチューブを装着したり、水で囲ったところを歩かせたり、2匹に綱引きをさせたりと、様々な実験を行い、その結果が紹介されている。そうした中で、ダンゴムシが通常と違う行動をとる場合があることに注目してそれを分析し、その背後にある「心」の存在に迫っていく。地道な実験の繰り返しによって小さな事実を積み重ねていく執念、ダンゴムシの研究にはダンゴムシとのコミュニケーション、その前提となる彼らを理解しようとする愛情が不可欠と言い切る著者は、本当にすごいなぁと思う。読み進めていくうちに読み手の自分も段々ダンゴムシに感情移入していき、何百回も同じ実験に付き合わされたり、変なものを身体につけられたりするダンゴムシのことを考えて少し切なくなり、こうした研究の成果がダンゴムシたちにも何かプラスがあればいいなぁと思ってしまった。(「ダンゴムシに心はあるのか」 森山徹、ヤマケイ文庫)
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