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星を編む 凪良ゆう

今年の本屋大賞ノミネート作品。大賞受賞作「汝、星のごとく」のスピンオフ作品と紹介されているが、前作より以前の話と前作の後の話が収録されていて、どちらかというと両方のエピソードを全部合わせて一つの作品という感じがするほど一体感がある。読後の感想は、自分だけかもしれないが、本作を読むことで前作の印象がかなり変わってしまったということだ。前作でちょっと気持ち悪いなと思っていた人物がガラリと誠実を絵に描いたような人物に思えるようになったし、そもそも前作は、親のネグレクト、SNSによる謂れのない誹謗中傷、各種ハラスメントなどの暗い社会問題のオンパレードで、登場人物もどうしようもないダメな人物ばかりだったと思っていたが、本作を読むとそうした絶望的な状況ばかりではないなと感じるようになった。この感覚の変化がどこから来るのか、もしかしたら話のタイムスパンが長いからだろうか、時間が経つとものすごい悲劇も和らいでいくものなのだろうか、などと考えてしまった。こうした変化を著者自身が最初から意図していただろうと考えると、本当にすごい作家だなと改めて感じてしまった。(「星を編む」 凪良ゆう、講談社)
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