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半席 青山文平

初めて読む作家。自分は知らなかったが数年前に色々な賞を取った時代小説ミステリーで、それが文庫化にあたって再び話題になっているようなので読んでみた。「半席」という言葉は聞いたことがなかったが、「自分の働き次第で御家人から旗本にランクアップできる立場の武士」とのことで、その半席の主人公が自分の出世には繋がらない江戸の町で起こった事件の謎を解くという設定の短編集。江戸の街並みの描写、江戸時代を生きた登場人物の心理描写いずれも緻密で、まるで本当にその時代にその町に住んでいたような書きぶりに圧倒される。その辺りが凄すぎて、どこまでが資料に基づく時代考証の結果でどこからがフィクションなのか分からなくなるし、本当にそういう立場の武士がいたということすら著者の創作なのではないかと考えてしまった。(「半席」 青山文平、新潮文庫)
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オンライン講演 数学史

オンラインで学ぶ「数学史」をシリーズの途中から参加してみた。タイトルには「お笑い数学」とあるが、至って真面目でわかりやすくためになる内容で、今回はエジプトのアレキサンドリア図書館に集った数学者、エラトステネス,アポロニウス,ヒッパルコス,メラニウス,プトレマイオス,ヘロン,ディオファントスらの業績やエピソードを楽しく学んだ。エラトステネスと伊能忠敬、プトレマイオスとケプラー、ディオファントスとフェルマーなど、時代や地域を超えた結びつきは知らないことばかりでとても興味深かった。次回は、時代を少し進めた中東の数学史とのこと。どのような話が聞けるか楽しみだ。

エラトステネスBC280-194
アポロニウスBC262-190
ヒッパルコスBC190-120
メラニウスAD70-140
プトレマイオスAD83-168
ヘロンAD10-70?
ディオファントスAD210?-290?
 
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麦本三歩の好きなもの第2集 住野よる

新刊が出たら必ず読む作家の新刊。既読の題名が新聞広告にちょくちょく出ていたので前作が文庫化したのかなと思っていたのだが、本屋さんで実物をたまたま見たら表紙に小さめな「第2集」の文字。そこでようやく続編の広告だったんだと気がついた。せっかく新聞広告を出してもこれでは気づいていない人も多いんじゃないかと思う。表紙の「第2集」の文字を大きくするか、いっそのこと全く違う題名にした方が良いと思った。内容は、前作同様主人公麦本三歩の日常を描いたものだが、前作もこんなに面白かったっけと思うほど面白い。何でこんなに面白いのかよく分からないが、主人公自身の心の声が面白くてしょうがない。多分読み手であるこちら側の変化の要素が強いのだろうが、何となく主人公が前向きというか明るさを増してきたとか、そんな変化もあるような気がする。だとすると次はもっと面白くなるはずと期待が高まる。それにしても本当に稀有な作家だと毎回思う。(「麦本三歩の好きなもの」 住野よる、幻冬社)
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オンライン講演 インフレーション後の再加熱

毎週参加している天文学の講演とは別の「宇宙論」の講義を視聴してみた。宇宙創生期に何が起きたのかをわかりやすく解説してくれるという内容だが、最近の研究成果が自分が昔読んだ本の記憶とは全く違うのでびっくりの連続だった。最近インフレーション理論というのをよく耳にするが、自分の思い描いていたのは、ビッグバンという宇宙の創生、物質の誕生があり、宇宙が膨張していくインフレーションが始まるというストーリーだったのだが、最先端の研究では物質が誕生した後、真空のエネルギーが支配していた世界が膨張、その希薄化された状況の中で再加熱という現象が起きて次のビッグバンにつながっていくということらしい。要するに、宇宙の誕生、インフレーション、再加熱、ビッグバンという順番が今のところ蓋然性の高い仮説なのだそうだ。途中で「ビッグバン」という言葉の定義が変わってしまっているようで素人にはわかりにくいし、後の方のビッグバンに違う名前をつければ良いのにと単純に思う。とりあえず今回の視聴で、後の方のビッグバンが起きるためには再加熱という現象が必要というところまではわかったが、問題はなぜその前にインフレーションという現象を考える必要があったのかであり、それは次回のテーマとのこと。宇宙の創生に関するインフレーション前の世界の話はその次。あと2回はどうしても視聴しなければと思った。
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オンライン講演 天文学入門(6)

毎週月曜日の夜に視聴している天文学の入門講座。講座自体は第6回目だが、自分自身は第3回からの出席なので4回目の参加ということになる。今回は、これまでの宇宙や天体の話とは打って変わって、元素や原子核という超ミクロの話。こうしたミクロの世界の科学的知見は宇宙創生の最初に何が起こったのかを考える天文学においても必須の知識らしい。①の元素ワールドでは「万物の源は水」のタレスからデモクリトス、アリストテレス、エーテルを否定したアインシュタインなどを経て日本の学者がニホニウムを合成するまでの科学史の振り返り。②は原子核の構造とそこで何が起きているかという話で、色々勉強になる話の連続だが、個人的には「世の中の元素で一番安定しているのは鉄(Fe)」というところが結構意外で面白かった。今回も最先端の科学者の先生に直接質問ができたし、素人の質問にも親切に対応してもらえてとても有り難かった。次回はいよいよミクロの世界と天文学というマクロの世界の結びつきの話になるようで、今からとても楽しみだ。
①私達の元素ワールド
②私達の原子核ワールド
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そして、すべては迷宮へ 中野京子

著者の本は新刊を見つけたら必ず読むようにしている。本書は、これまで新聞や雑誌に掲載された著者の短い文章を一冊にまとめたもので、ジャンルも専門の美術関連の解説記事、書評、時事に関するエッセイなど幅広い内容。美術関連の文章には基本的に大きなカラーの写真がちゃんと掲載されていて読みやすいし、読書案内も著者ならではという感じで楽しく読めた。(「そして、すべては迷宮へ」中野京子、文春文庫)
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オンライン勉強会 私たちを巡る色彩観

オンラインで「色彩」にまつわることを勉強する会議に出席してみた。人によって色に関する感覚は違うはずだし、自分自身、小学校に時に絵や工作で周りから「色の使い方が変だ」と言われ続け、心配した図工の先生から親が小学校に呼出されたりしてかなりのトラウマになっていることもあって、その辺りのことを勉強したいと思った。今ならば「個性的だ」くらいで済む程度だったのかもしれないが、60年近く前はそんなものだった。そんなことで出席してみたのだが、冒頭から「チェックインしてください」「miroで自分の思ったことを‥」「グループワークに移行します」などなど謎の言葉が連発され、「これはいかん」となった。何をしていいか分からず、グループ分けされたら同じグループの人に迷惑がかかるんじゃないかと思い、慌てて運営者にチャットで「グループに入れないで」とお願いする始末。優しい運営者はこちらの窮状を理解してくれてグループに入れない措置を取ってくれた。そんなこんなで、内容よりも自分のzoom会議の未熟さを痛感した1時間半だった。ご迷惑をかけた関係者に心からおわびしたい。
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テスカトリポカ 佐藤究

メキシコ、インドネシア、日本を舞台に犯罪者たちが悪の限りを尽くす様を描いたおどろおどろしいクライムノベル。普段読まないジャンルだが、書評誌に最大級の賛辞が並んでいたので読んでみた。とにかく登場人物は犯罪者ばかりでおぞましい犯罪の連鎖。しっかりした人物造形が描かれていてこれからどんな役割を担うのかと思っている人物もあっさり殺されていく。そのおどろおどろしさを増幅するのが謎めいた古代アステカ文明の神話の世界だ。巻末に列記された参考文献の一覧を見て、この話の何%が真実なのだろうかと思いを巡らせてしまう。ただただひたすら異世界に浸る、そんな読書体験だった。(「テスカトリポカ」 佐藤究、KADOKAWA)
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オンライン落語 白鳥彦いち2人会

昨年9月以来の白鳥彦いちオンライン落語2人会。いつも通りそれぞれ落語一席とトークという内容だが、オンラインで聞く人は実際の落語会よりもコアなファンが多いだろうということだと思うが、それに合わせて両者とも少しマニアックな演目だった。白鳥の演目は大昔に作って久しぶりにやる話とのことで初めて聞く話。白鳥の場合、横浜、東京、名古屋近辺の落語会に必ず行くようにしてきたし、オンラインも欠かさず見てきたせいか、最近では一度聞いたことがあるものばかりになってしまっていたが、新しいのが聞けて満足。彦いちの演目は逆に一度聞いたことのある設定だったが、内容は新しいものだったし、オンラインならではの画像を使った実験的な試みがあり、こちらも楽しかった。
①三遊亭白鳥 新あたま山
②林家彦いち あゆむ
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