横浜市の傾斜マンション事件で、旭化成建材の代表取締役は「担当者に悪意があるとしか思えない」と事件発覚の当初段階で発言した。“悪意がある”という言葉を会社のトップが口にする。これは、組織ではなく担当者個人の責任を他者に感じさせる効果を狙った発言としか思えない。小会社のトップが組織犯罪ではないと匂わせた後で、今度は親会社の旭化成の社長が記者会見の席で涙ぐむ。会社トップの涙には、山一証券社長の「社員は悪くない。悪いのは会社だ」という涙が記憶に残っている。あの方は人情味のある社長として後に評価されたようだが。しかし、今度の旭化成の社長の涙は、一体なんだったのだろうか?元請け・下請けの上下構造の中では、どこでも起こり得る、或いは常態化している実態を知りつつ、たまたま見つかった運の無さを嘆いた涙だとしたら、まったく情けない社長の涙である。或いは、最近の報道の如く組織の常習的行為としてならば、一体あの涙は!どうも日本も、ドイツのVW事件を対岸の火事と笑えないようである。
◆箱根の鄙びた旅館にて