実は、憲法をぞんざいにあつかう首相がこの国にはいる。権力を掌握してからの彼の行動や選択を見ると、今の憲法が嫌いでならないようである。それが苛立ちさえ生んで、投げやりな姿勢が随所に垣間見える。こちらの側で言えば、彼の粗略で扁平な歴史認識で、何でも自分の方向で処理したい腹が見え見えで、そんな程度の頑是ない御仁であるから、なおのこと、彼や彼の提灯持ちで造られる新たな憲法なんか糞くらえという感情なのだ。
戦後70年間、日本人は、憲法9条に対してある種の信仰に似た感情を持っていて、それが他人から貰ったものであれ、それを大切にすることで、かつての同胞の犯したアジアに対する非違行為への贖罪や懺悔としていた節もある。そうした感情の襞に全く頓着せず、直線の頭脳構造のままに粗略に邁進する政治家家業三代目を見ると、それが戦後日本を代表する人物像なのかと、落胆と悲しみが混ざり合う。