42作目・・・1989年 青春家族(井沢満)いしだあゆみ・清水美沙
43作目・・・1989年 和っこの金メダル(重森孝子)渡辺梓
44作目・・・1990年 凛々と (矢島正雄)田中実
45作目・・・1990年 京、ふたり(竹山洋)山本陽子 畠田理恵
46作目・・・1991年 君の名は(井沢満・横光晃・宮村優子・星川泰子・小林正広)
鈴木京香・倉田てつを
この本によると、朝ドラを完璧に低迷に導いた作品として「青春家族」を上げており、さらに「君の名は」が決定打になったと書いてあります。
それは一体なぜなのか。
「青春家族」は平成になって最初の朝ドラです。
前年度にNHK会長に島桂次という人が就任しました。
この人は、NHK閥の東大ではなく東北大卒で、欧米型のニュースショー「ニュースセンター9時」をスタートさせ、NHKエンタープライズという外注会社を立ち上げた人だそうです。
「将来、NHKの制作は全て外注すべき」と発言した事で局内に波紋を呼んだとか。
つまり「外注されたくなければ自分達で面白いものを作らないといけない」という危機感を生んでしまい、それがマイナス効果になってしまったというわけです。
「青春家族」は超現代を扱った作品で、アイドル稲垣吾郎を起用し、パソコンが登場するなど、おおよそ朝ドラらしくない作品だったそうです。
「7つの大罪」からは大きくはみ出ていたんですね。
にも関わらず平均視聴率が37・7%、最高視聴率は44%の大ヒットを遂げました。
この本ではヒットした理由を「オンエアのタイミング」であると書いています。
時代が昭和から平成になった・・・いわゆる新しい時代の幕開けの作品として、変わり種の作品がヒットしたという事なんだそうです。
ドラマは時代を映すもので、この現代劇は「新しい平成の始まりにふさわしい」と視聴者に受け入れられたのでしょう。
しかし。
ここでNHKさんは大きな間違いをしてしまう。
それは「朝ドラ」の枠を離れて、普通の連ドラのように面白くて変わった作品を作る事に必死になってしまったという事なんですね。
もし「青春家族」がヒットしていなかったら、NHKは伝統的な「7つの大罪」に返っていったろうと思われるのです。
宝塚でいうと「エリザベート」が青春家族にあたるのではないかと思います。
1996年初演の「エリザベート」はそれまでの宝塚歌劇の定義を覆す作品でした。
「死が皇后を愛する」と謳いながらも、正直、恋愛シーンはラストだけ。
娘役であるエリザベートの一代記、恋愛抜き・・・でもその生き方や悩みが当時の女性達の共感をえた事は確かです。
つまり「私もあなたも立場はエリザベート」というやつです。
しかし、21世紀に入っても相変わらず上演され続けていますが、宝塚版では観客は入ってもエリザベートに共感する女性はほとんどいあいのではありませんか?
「ゾフィの気持ちがよくわかる」
「雅子さんじゃあるまいし」的な意見が多々見られるように。そういう意味では東宝版の方がまだ進化してますよね。
でもこのヒットにより、座付き作家はトップコンビに合わせて作品を作るのではなく、その逆をやり始めます。
最初は一路真輝・花總まりにふさしい作品として作られた「エリザベート」が星組で早々に再演される事で、トップが作品に合わせていかないといけなくなります。
また、海外ミュージカルの連発でオリジナルがすっかり影薄い存在に。
座付き作家の筆力が落ちると同時に優れたスターも出なくなって、トップ1本主義に陥ってしまいます。
これを伝統の分野に戻したのが、同じ海外ミュージカルでもフレンチである「ロミオとジュリエット」であり、小柳奈穂子の「めぐり逢いは再び」だと思うんですけど。
今やヅカファンは「キュンキュン」を求めています。昔と同じようにね。
個人的には仕事が忙しく、朝5時起きして帰りは23時状態だったので、全く朝ドラを見ていないのでタイトルは知ってるけど中身は知らないものだらけです。
「青春家族」がそんなにヒットしたとは全然気づきませんでした。
そして朝ドラ世紀の大失敗作「君の名は」に行きつきます。
失敗した理由は「朝ドラ向き」ではなかった事だそうです。
・テーマ曲は暗い
・メロドラマ
等々理由は多々あるでしょうけど、これはNHK連続テレビ小説30周年記念作品として制作され、野田に大きなオープンセットを組み、ヒロインには新人の鈴木京香と倉田てつをが起用されました。
制作発表の時、タイトルを聞いて耳を疑った記憶があります。
菊田一夫の名作ラジオドラマ「君の名は」は有名な作品ですし、その頃はまだ岸恵子さんの映画を見ていなかったので、どんなストーリーなんだろうと興味がわいたんですね。
でも一方で「今時すれ違いドラマって流行るの?」という気持ちもあり。
母がよく「真知子巻が流行った」と話していたのを懐かしく思い、みたいなとは思いましたよ。
主演の鈴木京香がこれまた素晴らしく美しくて(仙台出身なのに)倉田てつを大ファンの私は飛び上がる程嬉しかったんです。
息子が生まれたら春樹にしようかなんて思った程。
臨月の体で野田まで行って、数寄屋橋で写真を撮ったり・・・自分としても随分なハマリようだったと思います。
が!
放映早々にブーイングが飛んでいた事は知っていました。
それは真知子の言葉遣いです。
後宮春樹と出会って戦後、結婚して・・・・という頃まで真知子の言葉遣いは、非常にばか丁寧だったんですね。
「おじさま・・・おみ足お気をつけ遊ばして」
こういうセリフ、現代人にはわかりにくく、信じられない程丁寧だと思うでしょうけど、昭和の頃はパンパンと呼ばれた女性ですらこの程度の言葉遣いはしていたのです。
戦前の宝塚の脚本集などを読んでも、この程度の言葉遣いは当たり前。
むしろ、新鮮な気持ちで綺麗な日本語を勉強する思いで見てたんですよ。
なのに「丁寧すぎる」ってブーイングですから・・・
(先日、避暑地の物語をアップした時も某掲示板では「ふぶきのあの感性がわからん。よくあんなセリフが書ける」とか書かれていましたが、あれこそ私の思い描く昭和初期の華族世界なんですわ)
真知子の言葉遣いは古き良き日本語の原点に見えたんですけどね。
結果的に、ある時から普通の言葉遣いになり・・・春樹がカストリ雑誌を売るあたりでちょっと引いちゃった記憶があります。
何年か前にケーブルテレビで再放送していたのを録画してみましたが、全体的には結構面白かったです。でもいわゆる「君の名は」じゃないですね。
当然視聴率は歴代最低を記録。
この原因をNHKは「昭和物だったから」ヒットしなかったと勘違い。
さらに朝ドラの迷走は続くのです。