よし坊のあっちこっち

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ブッシュ最後の一週間とチェイニーの悪あがき

2009年07月27日 | アメリカ通信
アメリカの副大統領というのは大統領の影に隠れてしまうものだが、ブッシュJr政権のチェイニーは違っていた。やんちゃ坊主ブッシュのお目付け役を担いながら、自分のやりたい事を実現する為に”目立った”影の黒幕を演じてきたように見える。それをメディアは実力派副大統領と報じた。しかし、このやり手の副大統領には、常に”いかがわしさ”が伴い、多くの国民はそれを感じ取っていたに違いない。特にイラク戦争突入のシナリオは間違いなくこの副大統領が書き、彼を中心とした、ネオコン一派(他にラムズフェルド国防長官、ウォルフウィッツ次官、物議をかもした国連大使ジョン・ボルトン)が、タカ派のブッシュJrを巧く抱き込み、点いた火に更に油を注いで、無駄な戦争へと持ち込んだと言える。

副大統領としては、最も悪名の高いのが、スキャンダルまみれのニクソン政権でのスピロ・アグニューだろう。何せ、汚職でブタ箱行きを、司法取引によって減刑(税金の申告間違いとして金を払う事にした)、その代わり辞任することで決着させた、犯罪で唯一辞任した副大統領なのである。
チェイニーは、もちろん犯罪という証拠は無いが、その暗い部分は”悪名高い”副大統領”のリストに間違いなく入る。

最近、ブッシュ退任の一週間前後の、ブッシュとチェイニーのホワイトハウスの内幕が明るみに出た。この二人、イラク戦争おっぱじめ屋としての同士でもあり、それ以前からの親交もあり、その絆は極めて強いのだが、例の、女性のCIA部員の名前をリークした事件(これもチェイニーの指示によるが)で起訴され、有罪となった彼の最も信頼する部下、”スクーター”リビーを恩赦に持ち込む為に目の色を変えてブッシュに食い下がったと言う話である。しかも、ホワイトハウス高官によれば、任期中、あんな形相のチェイニーを見たことが無いくらいだったらしい。ブッシュは、悩みに悩んだらしいが、最後は正義が成り立たないということで同士の圧力を蹴った。

ブッシュはその2年程前から、密かに、巷では決して有名ではない(無名に近い)が、その世界では極めて優秀と評価の高い弁護士に接し、事件の調査やアドバイスを依頼した。その過程で揺ぎ無い相互信頼が確立していったと言う。ホワイトハウスを去る前日、ブッシュは彼を密かに招きいれ、アルコールを飲みながら改めて尋ねたそうだ。”リビーはやはり、ウソをついているか”。そして弁護士の答えは”然り”。

翌日、ホワイトハウス内のセレモニーの後、ブッシュはチェイニーを呼び寄せ、囁いた。「要求は飲めない」。その瞬間のチェイニーの表情は、”信じられない”と言わんばかりの、しかも複雑な表情だったとある。

アメリカは、正義と言う言葉に弱い。黒子黒幕に大いに踊らされたブッシュも、最後の最後で”正義”と言う言葉、概念に救われたように思える。