よし坊のあっちこっち

神出鬼没、中年オヤジ、いや、老年オヤジの何でも有りブログだ!

映画三昧 - 橋のない川

2011年02月19日 | 映画
住井すゑのライフワーク、大作である。独立系で今井正がメガホンを取ったこの作品はオススメである。後年、東陽一によるリメイク作品が出て、それなりに悪くは無かったが、時代背景から来る迫力と言う点では、やはりオリジナルと言うか、今井作品を観ないと、熱いものが伝わって来ないから不思議だ。

飲んだくれの伊藤雄之助がいい。北林谷栄の御婆の味のある演技は観ている者の心を突き刺す。この映画が撮られた時代は、まだまだ、同和問題というか、差別に対する社会のフレームが荒削りであり、その雰囲気が映画作りにも自ずと映し出されたのではないかと思う。90年代に入って作られた東作品は、差別問題に対し、良くも悪くも社会全体がオブラートで包むような雰囲気の時代が影響してか、今井作品ほど切り込めていない様な気がするのだ。それにしても、北林谷栄が学校に乗り込んで、校長に向かって搾り出すセリフの場面は、涙で観えなくなる。

関東に比べ、関西は、「差別」の場面がより濃厚のような気がする。日常茶飯事とは言わないが、関西では同和問題と在日問題は、身近に、時には隣り合わせであったりする。

かつて、社内の女性から相談を受けた事がある。付き合っている男性がコリアン・ジャパニーズ、即ち在日の方だと言う。私の持論を展開して、好きなら進むべき、とアドバイスをした。恐らく本人も誰かに背中を押してもらいたかったのだろう。この女性の勇気をあらためて見直したものだ。

よし坊、歳も27となった頃、ある女性を好きになり、結婚の段取りへと突き進むのだが、ドタキャンとなり、一週間で5キロ痩せた。真相は、彼女が被差別の出身で、最後まで言えず、突然よし坊の前から姿を消したのだ。漸く見つけ出し、話し合い、よし坊は、それでも決意は固かった。よし坊は相手の出自など物ともしなかった。しかし、彼女は首を縦には振らなかった。よし坊は振られた。今となっては、何やら、ちょっぴりほろ苦く、懐かしい思い出である。