世界で活躍するサッカー選手にとって年二回(1月と8月)の移籍時期は重要だ。とりわけ今回の移籍ウィンドウはWカップ前の最後のチャンス。注目の香川の移籍は無かった。しなかったのか、出来なかったのか。昨年8月の移籍ウィンドウから今回までの動きには興味深いものがある。特に日本人と欧米のプレーヤーの違いは面白い。日本人の中でもサムライ・ブルーを代表する本田と香川の動きは対照的に映る。
今シーズンのプレミア・リーグがスタートした昨年の早い時期、香川がマンUで置かれた事情は明白だった。新コーチの下、彼の出番は減り、18歳の新進気鋭の若者ヤヌザイが取って代わった。彼がこの時点でどう思っていたのかは分からないが、移籍準備をするとしたらこのタイミングである。
ひとつのデータがある。同僚のメキシコ代表チチャリートと、アジア人として初めてプレーした韓国のパク・チスン、それと香川の初年度、二年目の出場回数である。シーズンで38試合あるうち、パク・チスンの出場回数は初年度34回、二年目14回である。チチャリートは27回と28回。これに比べ香川は初年度こそ20回とまあまあであったが、今シーズンは半分過ぎた段階で9回に止まり、今回のマタの獲得でこれからの出番は殆ど期待出来ない。
さらに重要なファクターは今年がWカップの年であることだ。その直前の半年間にプレーの場数を踏んでなければForm fittingが難しい。Wカップという、いわば国を背負って立つ選手は昨年から自分の状況を分析し、そのタイミングで自己をベストにもっていくべく動く。それだけWカップとは大きい存在だ。そこで活躍すれば世界のビッグクラブの注目も浴びる。
Wカップを前にしてのアメリカの選手の動きは大変興味深い。トットナム・ホットスパーで活躍していた米国代表のクリント・デンプシーは出番が減ったと見るや昨年電撃的にMLSへ復帰した。そして、今回1月の移籍ウィンドウではセリエAのローマで活躍していたマイケル・ブラッドレーもカナダのトロントへ移籍を果たした。ブラッドレーは怪我で戦列を離れ、復帰したものの、既に代わりが活躍していて出番はない。米国チームの要であるブラッドレーが試合を遠ざかるのは代表チームにとっても極めてまずいのである。
Wカップは4年に一度しかないから、年齢を考慮すると、うまくいって2回しか出られない。それを見据えながらロングランで自分の選手としての戦い方、戦略と戦術を描かねばならない。目標を決め、ハンターの如く、自分のポジションを獲りに行く。「ハンターの如く」は欧米人特有のキャラクターでもある。
さて、本田と香川。日本人にあって、本田は異質である。欧米人のマインドに近い「ハンター」である。その点では中田英寿もそうであった。だからヨーロッパで転戦出来た。欧米人にとって、中田や本田に同じ「ニオイ」を感じるのだろう。反面、丸ごと日本そのものの日本代表チームの中で反発を食らう。中田がそうであった。
本田の軌跡も面白い。オランダの下部チーム、フェンローでチャンスを待つも、時期来たらずと見るやロシアの強豪チェスカ・モスクワへ転進し、時節を待った。そしてACミラン。長かったが彼の戦略戦術である。
本田と比べると、香川はやはり「日本人」なのだと思う。マンUは滅多に手に出来ないトップブランドである。折角手に入れたトップブランドだから簡単に放り出したくないと思ったのかも知れない。もし、そうだとしても理解はできる。日本人としては理解出来るのだが、舞台は世界のツワモノ共が目まぐるしく動く、名うての市場だ。ハンター的精神力が無いと世界ではやっていけない。
最近、スポーツライターでサッカー、とりわけスペインサッカーに精通している小澤一郎氏が「何故スペインサッカーで日本人が活躍出来ないか」を書いていた。巧さとテクニックを誇る日本人だが、スペインでは通用しないという。試合の中での戦術が無いのがその理由だと言っている。戦争や試合で言えば、戦略戦術、ビジネスの世界で言えばマーケティングと言えるだろうか。日本人は世界を前にした時、これが欠けているから、あらゆる局面でもがいている。商品の品質の高さは、サッカーの巧さとテクニックに言い換えられるのだが、それだけでは最早、市場で勝てないことを我々日本人は過去20年で嫌というほど思い知らされてきたはずなのだが。
Wカップを控えた香川の戦略戦術は、やはり「1月移籍」であるべきだったと思う。
今シーズンのプレミア・リーグがスタートした昨年の早い時期、香川がマンUで置かれた事情は明白だった。新コーチの下、彼の出番は減り、18歳の新進気鋭の若者ヤヌザイが取って代わった。彼がこの時点でどう思っていたのかは分からないが、移籍準備をするとしたらこのタイミングである。
ひとつのデータがある。同僚のメキシコ代表チチャリートと、アジア人として初めてプレーした韓国のパク・チスン、それと香川の初年度、二年目の出場回数である。シーズンで38試合あるうち、パク・チスンの出場回数は初年度34回、二年目14回である。チチャリートは27回と28回。これに比べ香川は初年度こそ20回とまあまあであったが、今シーズンは半分過ぎた段階で9回に止まり、今回のマタの獲得でこれからの出番は殆ど期待出来ない。
さらに重要なファクターは今年がWカップの年であることだ。その直前の半年間にプレーの場数を踏んでなければForm fittingが難しい。Wカップという、いわば国を背負って立つ選手は昨年から自分の状況を分析し、そのタイミングで自己をベストにもっていくべく動く。それだけWカップとは大きい存在だ。そこで活躍すれば世界のビッグクラブの注目も浴びる。
Wカップを前にしてのアメリカの選手の動きは大変興味深い。トットナム・ホットスパーで活躍していた米国代表のクリント・デンプシーは出番が減ったと見るや昨年電撃的にMLSへ復帰した。そして、今回1月の移籍ウィンドウではセリエAのローマで活躍していたマイケル・ブラッドレーもカナダのトロントへ移籍を果たした。ブラッドレーは怪我で戦列を離れ、復帰したものの、既に代わりが活躍していて出番はない。米国チームの要であるブラッドレーが試合を遠ざかるのは代表チームにとっても極めてまずいのである。
Wカップは4年に一度しかないから、年齢を考慮すると、うまくいって2回しか出られない。それを見据えながらロングランで自分の選手としての戦い方、戦略と戦術を描かねばならない。目標を決め、ハンターの如く、自分のポジションを獲りに行く。「ハンターの如く」は欧米人特有のキャラクターでもある。
さて、本田と香川。日本人にあって、本田は異質である。欧米人のマインドに近い「ハンター」である。その点では中田英寿もそうであった。だからヨーロッパで転戦出来た。欧米人にとって、中田や本田に同じ「ニオイ」を感じるのだろう。反面、丸ごと日本そのものの日本代表チームの中で反発を食らう。中田がそうであった。
本田の軌跡も面白い。オランダの下部チーム、フェンローでチャンスを待つも、時期来たらずと見るやロシアの強豪チェスカ・モスクワへ転進し、時節を待った。そしてACミラン。長かったが彼の戦略戦術である。
本田と比べると、香川はやはり「日本人」なのだと思う。マンUは滅多に手に出来ないトップブランドである。折角手に入れたトップブランドだから簡単に放り出したくないと思ったのかも知れない。もし、そうだとしても理解はできる。日本人としては理解出来るのだが、舞台は世界のツワモノ共が目まぐるしく動く、名うての市場だ。ハンター的精神力が無いと世界ではやっていけない。
最近、スポーツライターでサッカー、とりわけスペインサッカーに精通している小澤一郎氏が「何故スペインサッカーで日本人が活躍出来ないか」を書いていた。巧さとテクニックを誇る日本人だが、スペインでは通用しないという。試合の中での戦術が無いのがその理由だと言っている。戦争や試合で言えば、戦略戦術、ビジネスの世界で言えばマーケティングと言えるだろうか。日本人は世界を前にした時、これが欠けているから、あらゆる局面でもがいている。商品の品質の高さは、サッカーの巧さとテクニックに言い換えられるのだが、それだけでは最早、市場で勝てないことを我々日本人は過去20年で嫌というほど思い知らされてきたはずなのだが。
Wカップを控えた香川の戦略戦術は、やはり「1月移籍」であるべきだったと思う。