4月16日、穏やかな春の一日、新宿御苑に御衣黄を観に行った。花期の最盛期からは2、3日遅れたようで、少しばかり赤みが差し始めていたが、初々しい緑の葉に独特の緑色の花びらが重なるように咲く趣は、なにか異境のような感じがした。御苑に1本しかないというこの御衣黄、しかし古木で、今春の大雪のせいもあって枝が折れ下がっているようで、痛々しかった。
去年のいまごろは高尾の森林科学園にウワミズザクラを見に行った。園内にある何本かのこの桜の、ちょうど眼下に見える場所に咲いていた木は、やはり老木で繭玉のような独特の花形もさることながら、やはり痛々しいものがあった。桜の木は寿命が短いのである。
そんな折り、生まれ故郷の千葉県の片田舎に帰る機会があって、車中、雑木林のあちこちにウワミズザクラが満開なことに気がついた。ああ、こんなところにこの桜が生えているのか。子供のころ親しんでいたはずなのにと、まったく思いもよらない発見だった。
身の回りのことごとは年齢を重ねた知識のよってはじめて知ることの出来ることがあるのだろう。歳をとることも捨てたものではないことを実感したのだった。 【彬】