ぼくらの日記絵・絵心伝心 

日々の出来事や心境を絵日記風に伝えるジャーナリズム。下手な絵を媒介に、落ち着いて、考え、語ることが目的です。

夏山に登る

2015年08月10日 | 日記

 このところ、年に一度、夏山に登っている。天候が最も安定した時期を選び、安全なことを確かめたうえでの登山である。今年は上高地から前穂岳をめざした。

 ただし、私たちの登山は山小屋を利用しないという条件をつけている。というのは、歳をとってレジャーとして楽しむには、山小屋は食事、トイレとあまりにも窮屈だからである。だから登ってすぐに引き返すという、いわゆるピストン登山になる。肉体的にはもっともきつい登山である。3,000メートルを越す今回の前穂岳も、だからピークに到着しなくても、引き返すというもので、残念ながら途中下山ということになった。といっても、通称「紀美子平」の、2,900メートル近くまで登った。

 その登ってきた岩山から見下ろすと、すぐ足元にはカール(巨大な谷合)状になった雄大な風景が、人を引き込むように広がっている。岩に這いつくばって、ハシゴやクサリにつかまりながら登ったはいいものの、さてどうやって帰るか、それを思うと身がすくむほど急峻な山であった。

 辛い思いをしてなぜ山に登るのか。登頂してなにかいいことがあるのか。古くから登山への問いが発せられているが、なかなかいい答えが得られない。私は、何かを求めるというより、ここまで来ちゃった、という感慨を強く持つ。岩場にへばりつき、這いつくばって上に出る。ああ、ここまで来ちゃった、という感覚である。それを続けていると頂上にいたる。頂上がなくとも、ここまで来れた、という自覚への恐れと喜びの高揚感、と言ったものだろうか。

 そんな言辞はともかく、老若男女が次々と登っていく。下界にはない、山の魅力があるのも確かである。【彬】

 絵は岩の隙間に咲いていた一輪のミヤマリンドウ。

 
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