この夏は暑かったが、9月に入ると涼しい風を感じることもある。すると、「夏の終わりに」という言葉が何度も浮かんでくる。季節の変わり目は、それぞれの感慨と風情があるものだ。活動的な夏を追想するような、やり残したことを悔やむような、何か切なさのような感覚だ。
僕はこの感覚がすきだ。すると、爽やかな自然の中に入りたいと思う。茨城にいた頃ならば車に乗り、窓を開け爽やかな空気を入れ、山の中をドライブするだろう。だが、東京にいる今、車はないし、近くに山はない。
天気の良い土曜日のこと。自宅近くの、武蔵野公園、野川公園、にウォーキングにでた。これら公園は自然のままの姿をよく残している。吹く風涼しく、蝉時雨は、アブラゼミからツクツクボウシに変わっている。公園の木々の間を思うがままに巡り、野川公園に併設された自然観察園にはいる。周囲をネットフェンスで囲い、昆虫や植物を保護管理している。木製の遊歩道に沿い歩く。実に多様な、夏から秋の山野草の花々。彼岸花は芽を伸ばし秋の花の準備をしている。水生昆虫やホタルを観察する池、エリア、もある。
僕は、野川公園にはランニングの練習で時々は来園するが、「夏の終わり」を求めてのウォーキングは初めてであった。涼しくなったこの日、多くの人が公園を訪れていた。みなそれぞれの「夏の終わりに」を楽しんでいる。
絵は自然観察園内の、ほたる池。
2017年9月9日 岩下賢治