少し、厳しいタイトルになりますが、米タイム誌の11月12日付けの特集記事のタイトル、 Beyond hate (憎しみを越えて)です。米国中間選挙直前なので、hate、は「分断」の比喩かと思いつつ読んだが、更に深く微妙なものだ。
この、10月27日に起きた、ペンシルベニア州、ピッツバーグのユダヤ教礼拝所(tree of life synagogue in pittsburgh)が、反ユダヤの男に襲撃され11名が亡くなった事件その他の最近のヘイトクライムについて、5名の有識者の寄稿文が紹介されている。
総じて、共通し主張しているのは、
① 反ユダヤによるヘイトクライムの犠牲者は最近ふえている。
② トランプ大統領の、アメリカ第一主義、という主張は、遠いスローガンで個々の人の心にとどくか疑問。
③ 同大統領は、人種、宗教、などでの少数弱者への対策が弱い。
④ これからの世界の運命を決めるのは、リーダーによる以上に自分たちの意志の統合による。
この記事の編集責任者は、「憎しみ」は人間のあらゆる本能の中で最も顕著なものだ。他の動物は生き残りの手段として、暴力や毒牙をつかうことがある、と述べる。タイム誌はリベラルな主張を繰り返えしてきた。だから、今回の記事も、選挙を前にした、反トランプ、反共和党の側に立った記事と読めないこともない。突き詰めれば、選挙の結果は選挙民の個人の利害を総計したものだと思う。個人が崇高な政治思想から投票することはあまりないだろう。かくして、選挙結果は、上院は共和党、下院は民主党が勝利した。
今回のタイム特集記事により、複雑で、困難な課題を抱える巨大国家の、ほんの一面を知ることができた。
絵はタイム誌の表紙を概略スケッチした。礼拝所の壁絵(生命の木)をモチーフにしたものと思う。
2018年11月8日 岩下賢治