カンナ、です。
ネタもなく、意欲もなく、たいくつな時には、食べ物の話をするのがよい。
昔食べたもの、美味しかったもの、まずかったもの、珍しいものなど、思い出すと次々に出てくる。つい最近のこと、スベリヒユを食べたことがあるかどうかで、一座が盛り上がったことがある。まずスベリヒユがどんな植物かから始まって、その調理法、歴史、味覚などなど。雑草だが、大昔から食べられていて、栄養も豊富。しかし、年取った人でも食べた経験がない人が多いようだ。
最近読んだ、米原万理の「旅行者の朝食」(文春文庫)という本が、おもしろい。ヨーロッパ、特にロシアにおけるジャガイモの普及に関する論考など出色である。また古いところでは、大岡昇平「俘虜記」の中の挿話。捕虜の日本兵たちが、酒が飲みたくて、配給のレーズンを集めて、こっそりワインを作るはなしなど、人間が暇な時に、どんなことを考えるか、示唆されること大である。
せっかくだから、私の食べものの話をひとつ。
魚屋で干物を買ってくる。開いたものではなく、丸干。代表的なのはイワシ、そのほか、サンマ、コマイ、アジ、サヨリ、なんでもよい。最近の干物は一夜干しが普通で、十分に干さないのが普及している。多分、天日干しすると手間がかかるから、一夜干しで済ましてしまうのだろう。そんな生干しの一本物を2〜3日、天日干にする。すると魚特有の生臭さが消え、また余分な脂分が滲み出て、さっぱりした味になる。十分に干したものは、骨や鰭なども心地よく食べられる。私には、酒の肴としてこれ以上のものはない。おすすめである。
ただし、硬いものが苦手な方は遠慮してほしい。親しい友人にこれを出してあげたところ、お前は歯医者の回し者かと、嫌味を言われたことがある。【彬】