ボケの花
プーチンは何故戦いを起こしたのか。
19世紀ではあるまいし、通信手段が発展し、社会経済のグローバル化が進んでいる現代社会では、他国を軍事的に制圧することは不可能であることを、知らないわけではあるまい。アフガニスタンを見ればわかる。
この決着は結局プーチンがどのように倒れるか、倒されるかの問題にならざるを得ないと思う。つまり多大な賠償を伴う国内問題である。クーデターが起こるか、殺傷されるか、、、引退ということはあるまい。引退というのはクーデターと同じである。
プーチンはおそらくロシア特有の専制主義にとりつかれたのであろう。ロシアのこの特性は旧ソ連のプロリタリア独裁とつながっていて、元はロシアの農村社会に関連づけられると思う。ソホーズ、コルホーズで集約されたロシアの土地や農地の国家所有は、ソ連が解体した後でも、未だ私有化されていない。大部分が、地域共同体で所有するか、国家が管理するか、である。土地が共同所有=国家所有される場合、政体は専制か独裁になりやすい。農業は私的な生産活動ではなく、地域的で自然環境に強く依存する産業だからだ。
土地や自然に依存する農業が私的生産に移行するためには、天候に依存する活動からある程度の抜け出す必要がある。このためには肥料の開発と農機具の発展が必須である。これなくして、自然や気象の変化に対応することはできない。ヨーロッパでは、土地は富豪・貴族が管理所有していて、マニファクチャーが進んだこともあって、比較的早く私的所有に進んだ。ところがアジアでは、灌漑農業が中心で、自然から抜け出すことが難しかった。工業化した中国ではいまだ土地は国家の所有である。この土地の国家所有が、ロシア、中国、東南アジアの諸国の専制主義とつながっている。(詳しい論述は私にはできないが、日本では戦後、占領軍の農地改革によってこの難問を乗り越えられた)
余談だが、黒澤明「七人の侍」の中の志村喬演ずる農村の長の役割中に専制の萌芽が見られる。農家はまとまらなければ効率よく生産することはできない。二二六事件などの農本主義も根は同じである。
プーチンはこのロシア的不可避ともいえる農村=資源=専制の幻想に囚われたに違いない。言ってみればパラノイアである。これを止めるものは、ロシア自身以外にいない。仲裁など不可能な事態になっているように思える。【彬】