次郎柿
「ながら族」がいるのだろう。スマホを離せない人たちが食事をし「ながら」画面から目を離さない。歩きながらスマホに夢中の人もいる。危険この上ない。電車の中、運転中もスマホを離せない。そんなに見たいものがあるのだろうか、と思う。スマホで写真を撮ることに夢中になり、橋から落下、死亡して人もいる。
スマホと同時に、最近気になるのは、「ながら」飲食である。プラコップや缶ジュースを飲みながら歩く。お菓子、サンドイッチなどを歩きながら食べる。子どもではなく、いい大人がである。
食べること、食事の仕方は、国々やいろいろな地域、あるいは各家庭で暗黙のマナーを内包しているものだ。日本だと箸の持ち方、器の置き方・持ち方、食べる順序、食事中のおしゃべり、食器の片付けなど。地域によって違うし、家庭内でも独特の雰囲気を持っているものだ。そうした食マナーで最も嫌われてきたのは、歩き喰いである。どんなに急いでいる時でも食べならは忌避されてきた。そんなタブーを歩き喰いはあっさり打ち破った、のか?
発端は鎌倉の小町通りのような気がする。ここは歩き喰いのメッカのようで、狭い道を食べ歩く。道には飲食店が立ち並び、座って食べるところがないので、商品が歩き喰い仕様で売られている。それがこの一帯のファッションともなった。それが日本全国に広がったのだろう。
ながら喰いは道ゆく人と接触し、他人を汚すことがないのだろうか。あるいは食べおわた器などどう始末しているのだろうか。
食習慣には衣服に勝る、人間の最も根本的なマナーが含まれている。
昔、テレビドラマで家庭の食風景が放映された時、問題となったのは新聞を読みながらの朝食であった。見苦しいという意見が多かったような記憶がある。ながら喰いは、気持ちのいい風俗ではない。【彬】