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「あかんべえ」

2007年01月14日 22時28分09秒 | ★★宮部みゆき
宮部 みゆき 著 新潮文庫。上下巻。

久々の、宮部さんの時代小説!
そう。先日の「ねこのばば」以来、私の気持ちは「江戸時代~」になっているのでした。。(進歩ないね。確か以前は鬼平まで飛んでったことがあったなさて、今回はどうなるでしょう??現代に戻ってこられるか?私??)

以下感想文。ちょっとだけですが、ネタバレありです。これから読む予定のある方はこれがわかると作品の魅力が下がってしまうと思いますので、読まないでくださいませ




得意の、、といっていいのかな。幽霊がらみのお話。
あの時代、多分かなりな確立で、こういうことは日常にあったのでしょうね。「生と死」が隣り合わせにとても身近にあった時代だから。

七兵衛とおさきという夫婦の構える「高田屋」という賄い屋で子どもの時から仕込まれ、「自分の長年の夢だった料理屋を興してくれ」と、親とも言える七兵衛に願われて、深川に「ふね屋」という料理屋を出す、太一郎と多恵夫婦。そして二人の大切な一粒種、十二歳の少女おりん。
この、料理屋の建物が・・いわくてんこ盛り!な、お化け屋敷だったのだ。
その事情を細部まではっきりと理解できるのが、十二歳のおりんちゃん。
引っ越してきてから、三途の川のほとりまで行ってしまう大病をしたせいなのか、この料理屋の建物に住む(??)お化けさんたち5人を見ることができ、話もできてしまう彼女は、この人たちが何故、現世にとらわれて成仏できないのかを調べて、解きほぐすことを彼らに約束する。
それは、三十年前に遡る、身の毛のよだつ1つの事件のせいだったのだけれど・・・

宮部流、全開!!
物語の中心は、このお化け騒動なのだけれど、他にも、何故、どうして?がてんこ盛り。あっちもこっちもいろいろなつながり、しがらみ、思い、思惑・・が入り乱れ、それがラストにきっちりと整理される。
それが、現代物と違って、なんとも温かみがある物語運びで・・

あの時代の、今にはない人と人とのつながりを感じられる作品だった。

ようするに、このお話の中心は、お梅ちゃん(さて誰でしょう?気になったら、読む予定のなかった人はこの本を読もうよ~~イジワル?)だったのね、と思ったときの衝撃はすごかったけど。(鳥肌たったよ。。ラストちょっと前の風景には。そして同時にとても切ないんだな。)
だから、作品の題名も「あかんべえ」なんだよねー。

物語の進行上、あまり触れられていないところで、とても気になったこと1つ。
腕に覚えのある包丁人の太一郎。
彼は一連の騒動(早い話が、幽霊の出る料理屋ってなってしまうのだ・・旗揚げの日の騒動で・・・)のなかで、渾身の料理をことごとく評価されずに終わってしまう。
食べてるときには絶賛なのに、途中から騒動が起こって最後は、器も料理もたたみに転がり、割れ、壊れ・・・・
哀れだなあ・・と思った。工夫に工夫を重ねて、お客の好みからその日がどんな祝い事かまで考えて出される料理が、「幽霊」の一言で吹っ飛んでしまうんだもの。
空しいだろうなあ。。。
騒動が治まった今後、きっとふね屋は盛り返して行くだろうと、切に祈ってます・・・(あ、江戸時代。。行っただろうと、、か。)

宮部さん、また時代小説が読みたいな。
「ぼんくら」でも読み直そうかな・・。


余談(もしくは蛇足)
主要人物の一人、太一郎。。
あのね。先日の「ねこのばば」の若だんなは一太郎なのね。で、今度は太一郎でしょ。こうなったらやっぱり次は太一郎さん・・・か?かあ??
と、ひとり苦笑してしまったり。
でも、太一郎っていう主人公は、『太一郎さん』以来、私は初めて出会ったなあ。どうしても「さん」付けの彼を最初は思い出しちゃって妄想が暴走・・・・したりしなかったり、、。頭の中で、意識して「呼捨て」にしてやっと、太一郎が太一郎として入ってきましたです。。
名前1つでこれだなんて、、困ったもんだ