遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

日本の製造業の中国離れは

2013-05-22 22:59:23 | my notice
 昨日、米国の製造業の中国離れは「リショアリング」で広がり続けていることを書きました。今日は昨日少し触れていた、日本の製造業についてです。
 古くは、「リショアリング」ではキャノン、国内に拘るトヨタがあり、特筆すべきは、世界の工場の代表格であるレノボの製品「ThinkPad」を日本のNECが、日本の山形で生産するという、逆現象の事例まであることでした。しかし、日本の製造業の中国離れは、人件費の安い他国への移転が主流にとどまっているのが大勢でもあると。願わくば、第二のNEC山形の様な知恵と努力で、脱中国の選択肢の中に、「リショアリング」が多く含まれて欲しいと。
 今日の読売の記事では、ジャパンディスプレイも中国の生産ラインの一部を国内工場に移すとのことです。「リショアリング」ではありませんが、高い技術力で世界トップクラスのシェアを持つ製品では今も国内生産を続けていることも紹介されています。
 

製造業中国生産見直し 東南アジアに拠点分散 ジャパンディスプレイ一部国内へ (5/22 読売朝刊)

 中小型液晶世界首位のジャパンディスプレイが中国の生産ラインの一部を国内工場に移すのは、円安進行で国内生産の競争力が回復しているのに加え、中国で人件費が高騰して生産コスト抑制の利点が薄れてきていることが背景にある。日本メーカーが中国での生産体制を見直す
動きは続きそうで、東南アジアなどに生産拠点を分散させる動きも加速している。(一言剛之 北京・栗原守)

円安も追い風
 
ジャパンディスプレイ
は、東芝とソニー、日立製作所の液晶事業を統合して2012年4月に発足し、3社の技術をすり合わせ、スマートフォン(高機能携帯電話)向けの製品の開発・生産に注力してきた。
 高画質で薄型・軽量、低消費電力の液晶パネルの引き合いは強く、
中国工場の一部を国内に移しても中国や台湾メーカーとの差別化を図れる
と判断した。
 国内メーカーでは、
東芝の記録用半導体や、ソニーの画像センサーなど、高い技術力で世界トップクラスのシェア(市場占有率)を持つ製品は今も国内生産を続けている

 最近の円安も追い風となっており、
東芝は今年度、半導体工場に1700億円の追加投資を計画
している。

タイへ移管
 日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、中国進出企業の現地での人件費はここ3年間で1.6倍に上昇している。
安価な労働力を目当てに進出した日本企業は体制の見直しを迫られている

 
船井電機は2011年度に9割を占めていた中国生産比率を引き下げている。中小型テレビの生産は、今夏までに増設するタイ工場への移管を進める。フィリピンでも
工場用地を取得し、プリンター生産拠点の移管を検討する。
 
バンダイは現在、玩具の96%を中国で生産するが、フィリピンで今年7月に新工場を稼働
させ、中国依存度を90%に下げる。
 
イトーヨーカ堂は中国での人件費高騰を受けて、日本で販売する衣料品の自主企画商品(PB)の中国依存度を引き下げている。11年度は全体の8割が中国製だったが、12年度は6割に減らした。13年度は3割まで縮小する代わりに、縫製技術が向上しているミャンマーとインドネシアの割合を増やす

 中国政府は最低賃金の基準を毎年13%以上引き上げる方針で、労働者の退職補償金も手厚くした。
 所得格差の縮小や、賃上げによる国内消費の拡大を図るためだが、進出企業にとっては
中国での生産コストは上昇を続ける見通しだ。日系企業は、最近の人民元高や、昨年秋以降の反日暴動のような「中国リスク」
を意識せざるを得ず、より低賃金の東南アジアなどへの生産拠点の分散化を進めてリスク回避を図る。

中小企業
 大企業に比べて経営体力が弱い中小企業にとって、人件費高騰の影響は切実で、「
撤退を選択肢として意識する経営者が増えてきている
」(深洲市などで中小企業の経営を支援する「キャストコンサルティング」の前川晃広氏)という。
 
浴衣製造の「東京印」(東京都)は現在、120万ドルかけてミャンマーに縫製工場を建設中
だ。07年ごろまではほぼ全量を中国・大連で生産していたが、人件費の高騰や労働者確保が難しくなった。ミャンマーの新工場で7割を生産する計画で、百瀬宏一社長は「常に人件費が安い場所を求めていくしかない」と語る。
 丸紅経済研究所の鈴木貴元シニアエコノミストは、「中国では人件費の上昇が今後も続く見通しで、アパレルや家電などの労働集約型分野では生産拠点を移す流れが続く可能性がある」と指摘する。
 一方、生産拠点への投資に加え、
中国の消費市場としての規模は大きく、大半の企業は反日暴動後でも中国での事業を続けている中国リスクにどのように対処するか、企業の経営判断が問われそうだ。

 高い技術で裏打ちされた高品質の製品は、技術の流出の危険がある中国などの国外生産ではなく、国内生産を続けたり、利点の人件費の安さが無くなってきた中国から国内回帰を始めているのですね。
 しかし、人件費等コストの安さを求めて、海外の国へ渡り歩く企業、労働集約型産業の故渡り歩かざるを得ない企業が多い現状は続いている様です。
 
 そして、大半の企業が反日暴動のリスクがあるにも関わらず、中国の内需の伸びを目当てに中国での事業を継続しているのだそうです。
 記事は、「企業の経営判断が問われる」と締めています。つまり、日本企業の経営判断力を問うているのです。言うだけ言って結論への踏み込みで結果責任を回避する、マスコミの特徴的当事者意識の薄さとも見えなくはありませんが、日米の製造業の中国離れを、連載でもないのに2日連続で載せている読売には、「リショアリング」に成功している日米の企業の知恵を絞り、努力を重ねる姿を、日本の企業の経営者に求めていると読み取るのが正しいと感じます。
 人件費が安い国を渡り歩くのは、知恵を絞っていない、コストダウンの努力が足りないと言うことです。いつかは渡り歩く国が無くなってきますし、残されている国々はそれなりにリスクが在ることも事実です。内戦が終焉していないミヤンマーの様に政情が不安定で、反日ではないものの紛争が勃発して安定操業に不安がある国は、少なくありませんし、企業への愛社精神が薄く、少しでも高い賃金を求めて取得した技術やノウハウを活かして簡単に転職してしまう風土の国も多い。

 中国離れの「リショアリング」は、安い人件費を求めて転々とする製造業のビジネスモデルの転換も示唆しています。
 良い品物を造って提供したり、欲しいと願がわれている製品を作って使う人に喜んでもらう。同時に、造ったり作る人々にも富をもたらす。そんな製造業の原点に立ち返ることを促している。そんな考えは、オセンチなのでしょうか。

 当面の利益を求め転々とするにしても、技術の研鑽と、努力の積み重ねで、いつか「オフショアリング」の単なる利益追求から転換し、「リショアリング」で国民が潤える製造業を目指す志は持っていて欲しいものです。
 日米で「リショアリング」を実現している企業。そもそも海外移転を踏み留まるべく努力をしている企業。それらの企業は結果として、強い、一流の企業なのです。

 ジャパンディスプレーの「リショアリング」や、NEC山形の「ThinkPad」の日本国内生産が、日本の製造業の復活に広まっていく予感を感じさせてくれます。
 政府の規制緩和、税制改革の支援も必要です。



 # 冒頭の画像は、ジャパンディスプレイの経営陣。左から田窪米治 チーフテクノロジーオフィサー 田窪米治氏、佐藤幸宏チーフビジネスオフィサー、大塚周一CEO、有賀修二チーフビジネスオフィサー、西康宏 CFO




  この花の名前は、ネコノヒゲ


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1 コメント

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円安がいい (imahi)
2014-08-02 20:45:23
やっぱり円安がいい!長年円高だったから日本の工場は中国に行ってしまったんだ。もっともっと円安になって、製造業が国内回帰して欲しい!!
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