英紙フィナンシャル・タイムズ(アジア版)で、ブッシュ大統領は不意打ちを食らったようだとしながらも、大統領の最初の公式反応を「手ぬるく遅い」と批判していたのだそうですが、帰国後ようやく夏休み返上で動き始め、人道支援ということで、輸送機の派遣実施と艦船の派遣計画の発表をするなど挽回策を打ち出して来ています。
旧ソ連圏など周辺の各国も、旗色を明らかにし始めていますが、ロシアの侵攻が周到な計画であり、撤退も進行が遅いことから、根深い歴史の変換に繋がりかねない気配も帯びて来たようにも見えます。
武力行使否定 対露圧力が課題 (8/16 産経)
<前略>
(ゲーツ米国防)長官はロシア軍のグルジア侵攻を予測できず、対応が遅れた理由について聞かれると、ロシア、グルジア双方に自制を促してきたとしながらも、「われわれの対応はロシア側から言われたことに影響を受けたところがある」と釈明した。
侵攻開始前、ゲーツ長官、ライス長官ともにロシアのラブロフ外相、セルジュコフ国防相と連絡をとりあったが、ロシア側は「グルジアに入るつもりはない」と説明したという。
米中央情報局(CIA)で旧ソ連情勢を分析してきたゲーツ長官は安全保障政策に携わるうえで、「信頼ではなく、国益、現実をもとにすべきと考えている」との信念を披露したものの、ロシア側の意図まで見抜けなかったようだ。
イラク、アフガニスタン問題に追われるなか、グルジア情勢への米国の情報収集活動、分析が不十分だったとの批判も出ている。
ゲーツ、ライス両長官からの適切な助言がなかったためか、ブッシュ大統領はロシアとグルジアの対立が激化しても、五輪が開催されている北京から米国に戻ることはなかった。
保守派コラムニストのチャールズ・クラウトハマー氏は14日付の米紙ワシントン・ポストへの寄稿で、2005年8月末、米南部に被害をもたらした大型ハリケーン・カトリーナの際、ブッシュ政権の初動対応が遅れたのを引き合いに、「大統領はプーチン首相が隣国への侵略を指図していたとき、北京でビーチバレーの観戦を楽しんでいた。この『ミニ・カトリーナ』のような状況の埋め合わせをする必要がある」と批判。主要国首脳会議からの“除名”などの制裁案をとりまとめ、ロシアに撤兵圧力をかけていく必要性を強調した。
プーチン首相は、グルジア軍の侵攻開始翌日の 9日には北オセチア入りしてPRと指揮をしていました。
ブッシュ大統領の行動の鈍さは、レームダック化している事の他に終焉間近で、国防長官、国務長官と言った主要メンバーまでもが鈍感で中期的視野を欠いてきたことも起因していたのですね。その隙間を狙ったロシア・プーチン帝王のしたたかさは、ますます盛んですが、世界の各国への大きな影響力を持つ米国で、2人の長官が、「ロシアの言うことを信じて、騙された」と言い訳されても、ロシア近隣で日々安全保障におののいている人々は、たまったものではありません。(どこかの国のなんでもひとごとのようにみざる・きかざるで先送りする政府とにていますが。)
ロシアが、陸上はもとより、空も海も封鎖しての包囲で兵糧責めをするなか、輸送機を着陸させたのは、包囲網に穴をあけることができ、大きな成果と言えます。大量な物資を運ぶには、海上の封鎖にも穴をあけねばなりません。
ゲーツ米国防長官は、道路は封鎖されていないと言っているようですが、ゴリへの道路はロシアの戦車などで封鎖され、通行出来なくなっているとの報道が多数ですね。
遅まきながら鈍い巻き返しを図り始めた米国ですが、サルコジ大統領、メルケル首相の調停活動と連動しながらも、プーチンの本気の侵攻には、強力な対抗手段がなくては、その野望を止めることは出来ないと考えられます。
それは、ロシアと自由主義連合国との新たな冷戦時代の幕開けになる可能性をはらんでいます。プーチン帝王のわがままな野望の規模しだいですが...。
周辺各国は、それぞれに自国を護るため旗色を明らかにしつつ行動も開始している国も在ります。
ウクライナのユシチェンコ大統領は大統領令で、ロシア黒海艦隊がセバストポリ港の基地の出入港に許可制を発しました。更にグルジアを訪問し支援を明らかにすると共に、国内ではグルジアに続きCIS脱退の方向に進んでいます。
ウクライナ:CIS脱退追随も グルジアへの露軍事介入 - 毎日jp(毎日新聞)
エストニア政府は志願兵約50人をグルジアに派遣したそうですし、ラトビア議会もロシア軍の即時撤退と、グルジアのNATO加盟促進を支持する決議をしています。
ロシア軍のグルジア侵攻を機に、旧ソ連構成国や東欧など周辺の国に対露警戒感が高まっている。こうした国の間では、グルジア支持やロシアの介入を未然に防ぐための措置導入などの動きが広まっている。
<中略>
ウクライナ、バトル諸国では、ロシア軍によるグルジア侵攻を機に「ロシア脅威論」が国内で高まり、NATO傘下で安全保障を強化する重要性が再認識されている。各国はいずれも国内に多数のロシア系住民を抱えており、「ロシア国籍住民の保護」を理由にグルジアへの軍事侵攻を正当化したロシアの主張を黙認すれば、将来、自国にロシアが軍事介入する口実を与え、「第2の南オセチア」になりかねないからだ。
ウクライナ、バトル諸国は近年、米国よりの外交姿勢強め、ロシアからエネルギー供給を止められたり、NATO加盟への対抗措置としてミサイル攻撃の標的に名指しされてきた。
旧ソ連構成国のなかでは、親露政権のカザフスタン、ヘラルーシ、アルメニア、キルギス、タジキスタンは、南オセチア紛争についてグルジア側を非難、独立後、親米に転じた国々との立場の違いを鮮明にしている。
旧ソ連圏ではロシア、カザフスタンに次ぐ有力産油国で、脱ソ連GUAMメンバのアセルバイジャンの、グルジアの黒海沿岸の港を通じた石油と石油製品の輸出を8日から停止し、ロシアルートを検討との発表があり、ロシアの今回の主要目的である石油・ガスの流通ルート制圧の牙にかかったのかと想いましたが、ブリティッシュ・ペトロリアムの発表ではロシアルートは使用しないとの記事もありました。
ポーランドと米国のMD配備交渉は、ポーランドの配備への見返りとしての防空能力強化の為の兵器供与を要求めぐり、米国のロシアへの刺激を避ける配慮から交渉が進展していませんでしたが、今回の侵攻を機に米国がポーランドの要求を全面的に飲む形で合意の運びになりました。
侵攻が現に生じたことで、米国のロシアへの配慮の根拠が薄くなったからですが、MD 配備がロシアに危機感を生じさせ、侵攻の遠因になったと言えなくもなく、米露の溝は深まるばかりと言える事態に入ってきています。
世界世論から孤立している現状の理解が乏しく空気が読めていないプーチン帝王には、2014年、ソチでの冬季五輪のボイコット、WTO加盟不認証、G8からの除名など、様々な制裁が考えられますが、最も有効なのは資源不買運動です。ドイツなど欧州各国では依存度が高いぶん大変でしょうが、ゼロは無理として大幅削減に向け対策を検討・実施すべきです。
資源を買って貰わないと繁栄が消滅するのが、ロシアの唯一最大の泣き所です。
新冷戦はやむを得ないとしても、第三次大戦は避けねばなりません。避けようとする各国の足元を見透かしてのロシアの強硬姿勢ですが、前述の思い切った制裁措置はカードとして使うのみならず、成り行きによっては使用すべきだと考えます。
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遅ればせながら・・・・・TBありがとうございました!
再冷戦勃発か?と心配しながら報道を見ております。
TVはオリンピック中心で、まだまだ取り上げる時間が少ないのが残念ですが・・・・・
遊爺様のブログ、とてもわかりやすくて勉強になります。またちょくちょく覗かせてくださいね。
ご無沙汰いたしております。この記事大変読み応えがありました。
ロシア軍のグルジア侵攻・・でまた世界に大きな波紋が生まれました。ロシア軍は撤退すると言っても完全撤退までには、西側先進国の団結遺憾かと思います。
旧ソ連に支配されていた国でも、中央アジアはロシア支持のようですね。バルト3国は事のほか小国でありロシアと隣接しているだけに、不安も大きいと思います。
ロシアを主要国首脳会議からの“除名、ロシアの資源に依存しない・・するぐらいの手段を取らないと、ロシアは完全撤退しないと思いますが・・
それにしてもロシアには隙を見せると日本にだって攻勢を架けられる危険が在りますね・・
> 再冷戦勃発か?と心配しながら報道を見ております。
ロシアと米国&NATO加盟国間の溝は深まるばかりで「新冷戦」の始まりの傾向ですね。
> 遊爺様のブログ、とてもわかりやすくて勉強になります。
光栄です。
休日専門のアクセスなのですが、10月末頃までは、その休日も取り込み中でこの間書き込みがとぎれることが多いと想いますが、こちらこそよろしくお願い致します。
ロシアの撤退は、容子さんのご指摘のように、ロシア流の撤退(誰も認めず孤立化を一層深めている)で、停戦協定を独自に解釈して南オセチア自治州やアブハジア自治共和国のグルジア側に緩衝地帯と称して軍を駐留させていますね。北方4島の居座りと同じですよね。
仰る通りで、西側諸国が団結して、停戦協定に唱っている平和維持軍の駐留を早期実現させるべきですね。
東西合同の平和維持軍駐留となったとき、日本はどんな形で参画するのか、不安定の弧の東端が今回の戦争で伸びそうな今日、日本も遠い地の出来事とは言っていられませんね。