遊爺雑記帳

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中国の資本市場に忍び寄るデフォルト危機

2021-08-10 01:33:55 | 中国 全般
 7月上旬に中国の銀行の間で飛び交った1通の文書、「15号文」。銀行に対し、多額の債務を抱えた融資平台(地方政府の資金調達事業体=LGFV)への融資を打ち切るよう通達。
 これまでデフォルト(債務不履行)を許されていなかったLGFVは合計で約48.7兆元(7.5兆ドル)の債務を抱えており、そのうち11.9兆元は債券などの確定利付証券で保有されている。
 「銀行が輸血を行わなければ、LGFVはデフォルト危機に直面する」。
 しばらくすると、回覧されていた文書が消え、国営メディアでも文書への言及がほぼ立ち消えた。
 これが中国の金融規制当局が直面しているジレンマだと、英エコノミスト誌。
 
中国の資本市場に忍び寄るデフォルト危機 金融当局がジレンマに直面、最大のリスクは地方政府系の投資会社 | JBpress (ジェイビープレス) 英エコノミスト誌 2021年8月7日号

恒大集団と中国華融は氷山の一角にすぎないのかもしれない。

 
7月上旬に中国の銀行の間で飛び交った1通の文書が、投資家と地元政府当局者の不安を招いた

「15号文」として知られる公文書は銀行に対し、多額の債務を抱えた
融資平台(地方政府の資金調達事業体=LGFVへの融資を打ち切るよう通達していた。

 
LGFVとは、市や省政府が建設プロジェクトや公共工事の資金を調達するために立ち上げる企業のこと

 これまで
デフォルト(債務不履行)を許されていなかったLGFVは合計で約48.7兆元(7.5兆ドル)の債務を抱えており、そのうち11.9兆元は債券などの確定利付証券で保有されている。

消えた公文書
 こうした企業は往々にして、債券の金利を支払うために銀行融資を利用する。着実な融資の流れが途絶えれば、混乱が生じるのは必至だ。

「銀行が輸血を行わなければ、LGFVはデフォルト危機に直面する」。ある地元投資家は中国メディアにこう語った。

 
しばらくすると、回覧されていた文書が消え、国営メディアでも文書への言及がほぼ立ち消えた

 一部の投資家は、公文書は早計に発表されたもので、今後、そこまで厳しくない別のバージョンが出されるのではないかと見ている。

 一方で、銀行は命令を実行に移しているが、LGFVによる最初のデフォルトが債券市場(LGFVが発行している証券が全体の約10%を占める)で大混乱を引き起こすことを恐れていると見る人もいる。

 
これが中国の金融規制当局が直面しているジレンマだ。

 当局としては、経営がお粗末なLGFVが資本をため込むのを阻止し、著しい経営難に陥った企業の破綻を容認しなければならない。

 だが、パニックを引き起こしたり、健全な企業の資金へのアクセスを絶ったりせずに、これを成し遂げなければならない。

 LGFVは、当局者の決意を試している多くのケースの一つにすぎない。

デフォルトする企業の規模と知名度に異変
 
金融情報会社ウィンド(万得)によると、中国のオンショア(本土)債券市場におけるデフォルトは過去最高水準に達し、企業は2021年上半期に約970億元相当の元本について返済を滞らせ、その額は前年同期比でほぼ50%増加した。

 華夏幸福基業は2月に5億3000万ドル相当の債券でデフォルトし、不動産デベロッパーによるデフォルトとしては中国で過去最大となった。

 また、重慶市の石炭の大半を生産している国営企業の重慶市能源投資集団は3月にデフォルトし、国営企業に対する地方政府の支援への信頼が大きく揺らいだ。

 しかし、それ以上に心配なのは、経営難に苦しむ一部企業の規模とプロフィールだ。

 
中国が近年では初のデフォルトを経験した翌年の2015年には、デフォルトする企業は平均でオンショア債の発行残高が約10億元だった

 
格付け会社スタンダード・アン・プアーズ(S&P)は、この数字が今年、90億元近くまで膨らんだと見ている

 経営不振の巨大不動産会社、恒大集団(エバーグランデ)は、オフショア(中国本土以外の市場)債とオンショア債の合計で、1000億ドル以上の有利子負債を抱えている。

 失態が相次ぎ、規制当局からの圧力が増していることから、投資家の信頼感が急激に低下した。

 同社のオフショア債は額面1ドル当たり50セントを割り込む水準で売買されており、多くの投資家がデフォルトを予想していることを示唆している。

 
中央政府の支配下にある企業はこれまで、破綻に直面することを許されなかった

 しかし、
オフショア、オンショア双方で合計400億ドル以上の債務を抱える国営資産運用会社の中国華融資産管理(ファロン)は今、苦境に陥ったように見える。

 かつて中国で最も有力な金融コングロマリット(複合企業)の一角をなした同社は2020年の決算を発表しておらず、投資家は会社の財務状態がお粗末だと推測し、破綻に賭けるようになった。

規制当局が破綻容認に向かう兆し
 こうしたリスクは、北京のテクノクラート(実務官僚)が描き出す落ち着きを打ち砕く恐れがある。だが、
規制当局は、以前よりもデフォルトを容認する意思があるのかもしれない

 
当局はデフォルトを容易にする2つの分野で大きな権限を掌握した。

 
一つには、地方自治体や州政府が所有する不振企業への統制力を強めた

 こうした企業は
デフォルトする際、往々にして、コネに恵まれた債権者を優遇するが、その他の債権者を除外する内輪の取引をまとめることを許された

 こうした状況に巻き込まれた投資家は、これが変わってきたと話している。

 例えば、昨年11月の石炭大手、永城媒電集団のデフォルトを取ろう。デフォルト後の調査では、同社が一部の債権者への返済を減らそうとして資産を移し替えたことが分かった。
 規制当局は即座に介入し、外国人を含むすべての投資家に対し、会計操作をしても同社が可能な限り返済することに変わりはないと明言した。

 これで、
デフォルトが生じた場合に自分たちがどう扱われるかという投資家の懸念が和らぎ、極めて重要なことに、さらに多くの企業が経営難に直面するなかで市場の流動性が保たれた

 また、規制当局は
破綻後のリストラ(再編)プロセスに対する権限も強めた政府主導のリストラは従来、不透明性に包み込まれていた。これが、ここへ来て変わった

 中国の一流大学である北京大学と関係のあるコングロマリット、北大方正集団(PUFG)が2019年にデフォルトした後には、再編条件の多くが公表された。

 S&Pによると、同社の再建計画はわずか581日間でまとめられた(中国の平均は679日間)。

 
裁判所主導の再編の後、PUFGの資産に対する債権回収率は31.4%にのぼり、その他50社の中国企業再建案件の平均回収率23.7%を上回った

 このような効率は、市場ベースの投資を呼び込み、国家に義務付けられた投資の必要性を減らしているとS&Pのチャールズ・チャン氏は指摘する。

LGFVの破綻があるか?
 
こうした事例は、当局者がより困難な問題に取り組む際の指針になるだろう。

 多くの投資家は今、もしエバーグランデの問題が長引くようなら、同社がデフォルトを認められ、リストラに入ると見ている。

 資産運用会社アバディーン・スタンダード・インベストメンツのエドマンド・ゴー氏によると、幅広い事業を手がけるファロンは、エバーグランデよりも大きなシステミックリスクを抱えていると見られる。

 これは、
市場ベースではなく国家主導の救済が行く手に待ち受けているかもしれないことを意味する

 
何より大きなリスクになるのが、LGFVかもしれない

 投資銀行マッコーリーのラリー・フー氏は、LGFVによる最初のデフォルトは「かなりの市場乱高下を引き起こすだろう」と話している。

 もし
規制当局が例の15号文を執行すれば、先例となるデフォルトが今後数カ月以内に起きるかもしれない

 対照的に、
より穏便なスタンスが取られたら、当局がこの難題に挑む用意がまだできていないことを示唆する

 金融情報会社ウィンド(万得)によると、中国のオンショア(本土)債券市場におけるデフォルトは過去最高水準に達し、企業は2021年上半期に約970億元相当の元本について返済を滞らせ、その額は前年同期比でほぼ50%増加。

 中国が近年では初のデフォルトを経験した翌年の2015年には、デフォルトする企業は平均でオンショア債の発行残高が約10億元だった。
 格付け会社スタンダード・アン・プアーズ(S&P)は、この数字が今年、90億元近くまで膨らんだと見ている。

 経営不振の巨大不動産会社、恒大集団(エバーグランデ)は、オフショア(中国本土以外の市場)債とオンショア債の合計で、1000億ドル以上の有利子負債を抱えている。
 同社のオフショア債は額面1ドル当たり50セントを割り込む水準で売買されており、多くの投資家がデフォルトを予想していることを示唆している。

 オフショア、オンショア双方で合計400億ドル以上の債務を抱える国営資産運用会社の中国華融資産管理(ファロン)は今、苦境に陥ったように見える。
 同社は2020年の決算を発表しておらず、投資家は会社の財務状態がお粗末だと推測し、破綻に賭けるようになった。
 
 規制当局は、以前よりもデフォルトを容認する意思があるのかもしれないと、英エコノミスト誌。
 当局はデフォルトを容易にする2つの分野で大きな権限を掌握した。
 一つは、地方自治体や州政府が所有する不振企業への統制力強化。企業はデフォルトする際、往々にして、コネに恵まれた債権者を優遇するが、その他の債権者を除外する内輪の取引をまとめることを許された。
 これで、デフォルトが生じた場合に自分たちがどう扱われるかという投資家の懸念が和らぎ、極めて重要なことに、さらに多くの企業が経営難に直面するなかで市場の流動性が保たれた。

 もう一つは、規制当局は破綻後のリストラ(再編)プロセスに対する権限も強めた。政府主導のリストラは従来、不透明性に包み込まれていた。これが、ここへ来て変わった。
 裁判所主導の再編の後、PUFGの資産に対する債権回収率は31.4%にのぼり、その他50社の中国企業再建案件の平均回収率23.7%を上回った。

 投資銀行マッコーリーのラリー・フー氏は、LGFVによる最初のデフォルトは「かなりの市場乱高下を引き起こすだろう」と話していると英エコノミスト誌。
 もし規制当局が例の15号文を執行すれば、先例となるデフォルトが今後数カ月以内に起きるかもしれない。
 対照的に、より穏便なスタンスが取られたら、当局がこの難題に挑む用意がまだできていないことを示唆すると。

 「15号文」が消えたのは何故なのか。
 早計に発表されたもので、今後、そこまで厳しくない別のバージョンが出されるのか。
 銀行は命令を実行に移しているが、LGFVによる最初のデフォルトが債券市場(LGFVが発行している証券が全体の約10%を占める)で大混乱を引き起こすことを恐れているのか。
 中国の資本市場に異変の危惧が漂っている様子ですね。政府主導による実質破綻企業に対する金融支援打ち切りが始まろうとしている。。





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